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New Generation Fantasy

 私、長谷川小雨、クラスで特に目立つこともない地味で男装が好きな高校2年生。

 友達の桐谷悠にオススメされて始めたゲーム【Next Generation Fantasy】にハマってます。

 このゲームの良いところは、生産系スキルが充実していて、まったり一人でも遊べる事。

 気が付いたら服飾系スキルがカンストしていました。

 生産三昧で楽しくゲームをしていたある日、不思議な事が起こりました。

 それは―――。


「最近ソフィーちゃんの様子が変なんだけど」

 私、長谷川小雨は友達の桐谷悠に疑問を投げかけた。

「ソフィーちゃんって服屋の子だよね?」

悠は慌てた様子もなく聞き返した。

「そうなんだよ、最近急に視線が熱いっていうかさ」

「ソフィーちゃんに何かした?例えばプレゼントとか」

悠が探るように聞いてきた。

「そういうのはしてないけど、最近衣装を変えたかな」

「へえ、どんなの着てるの?」

興味深げに悠が聞いてくる。

「最近実装されたスーツあるでしょ?あれカッコよくて私も着たいなぁって思って型紙をつくってみたんだ。そうしたらちゃんと私が着れるように出来て」

「あのゲーム男装なんて出来たんだ!?」

 悠が驚く。

 【Next Generation Fantasy】通称NGF、私と悠が遊んでいるVRMMOだ。

 ボイスコマンドを採用して技名を叫んで戦え、しかも技名をカスタムできると人気のゲームだ。

 衣装を好きに染色できることも魅力で私は主にそっちに惹かれてプレイし続けている。

 しかもソロプレイモードとマルチプレイモードを切り替えて遊べ、ソロプレイではNPCを攻略できるゲームとして話題になった。

  そう、【NGF】のもう一つの売り、それは次世代スーパーAIによるNPCの実在性とそのNPCと関係を築けることだった。そう

「私は服はそんなにこだわらないから知らなかったなぁ。そういえば小雨服飾系スキルカンストしてたっけ」

「うん、羊をもふもふ毛を刈ったり布を作ったりできてとっても楽しいよ」

「それで、話を戻すけど男装したらどうなったの?」

「それがね、男装したままソフィーちゃんの所に行ったらちょっと驚かれちゃったんだけど、そのあとレインくんって呼ぶようになって」

【レイン】私のNGFでのキャラクター名だ。

「今までお友達みたいに話してたんだけど、この前急にプレゼント貰っちゃって」

「生産漬けのレインくんもやっとそこまできたかぁ」

 悠は納得したようだ。

「小雨は服飾目当てで始めたから知らないかもしれないけど、このゲームはNPCと恋愛までできるすっごいゲームなんだよ」

 悠のテンションが上がった気がする。

「小雨と一緒に遊んでるのと違うサブキャラで私もNPCと遊んでるんだ」

「じゃあ今夜私のサブキャラと会おうよ。見た方が早いから」

 悠が続けて言った。

「分かった、じゃあ今夜ね」

 と悠に返事をする。

「ばいばーい、あ、ユウって名前でフレンド送るからね」

 遊ぶ約束を取り付けて帰宅した。



 帰宅し、お風呂や明日の準備も終わらせ、最速でゲームを起動する。

 ログインした直後、ユウからフレンド申請が届いた。

 申請を許可すると早速ユウからチャットが届く。

「じゃあこれからミランダのバーで会おうよ。私のワールドの招待送るね」

 ユウの遊んでいるワールドに合流する。

 これはソロプレイの招待モードだ。

 ミランダとは中央都市のとなりにある町だ。

 バーの前に付くとすらっと背の高いオジサマがいた

「おつかれ、驚いた……よね?」

 いつも遊んでるキャラクターは女の子だったけれど、今目の前にいるのは声も低いイケオジだった。

「あれ、声」と言うと

「ボイスチェンジャー機能もあるんだよ、このゲーム」

と説明してくれた。

「レインもやってみなよ、男装と合わせてさ」

 ボイスチェンジャーの設定を教えてもらい試してみる。

「ユウ、どうかな」

 少し低く、でも女性らしさも残した声色だ。

「はう、それいいよ!めっちゃいい!ときめいちゃった」

 とわちゃわちゃと一通り戯れるとユウが言う。

「人と会う時はあっちのキャラだけど、一人で遊ぶときはこっちなんだ」

 ユウはちょっと照れ臭そうに笑っている。

「サブキャラが本名ってどうなの」

 そう、彼女のメインキャラの名前は〈いちご男爵〉というふざけた名前だった。

「それはまぁ……、名前呼んでもらいたいじゃん?」

「ふん……それじゃ入ろうか」

 ユウが咳払いをして声を整える。

 カランカラン、と扉を開けて店に入るとカウンターの中に一人、細身ながらも筋肉質なオネエがいた

「あら、ユウ。いらっしゃい」

 そそくさとカウンターから出てユウの腕をとる。

「あら、今日はお友達と一緒なの?私はバーバラ、よろしくね」

 バーバラと名乗るオネエとユウの距離が近く、面食らっていると

「実は付き合ってるんだ」

と照れ臭そうにユウが笑った


「たぶんソフィーちゃんも特殊モードに入ったんだと思う」

 渋い声でユウが言う、普段より落ち着いた喋り方だ。

「普通はプレイヤーからアタックして攻略する筈なんだが…」

「じゃあユウもバーバラさんにアタックしたんだ」

「凄かったわよ」

とバーバラさんが口を開く。

 プレゼントや猛アタックの経緯をバーバラさんが説明してくれた。

「それは置いといてだな」

ユウが顔を赤くして話を戻す

「試しに今男装に着替えられる?」

「分かった」

 UIを操作し、衣装プリセットを変える。

「あら、いいじゃない、素敵よ」

バーバラさんが褒めてくれる

「多分AIがレインの趣向をスキャンしてNPCが変化したんだと思うよ」

 曰く、普通はプレイヤーからNPCにアタックして振り向いてもらうのが普通らしい。

「少し外を歩いてみるか、また来るよバーバラ」

 このワールドのNPCの反応を見てみよう、とユウが提案する。

「またね」

 バーバラの挨拶を背に店を出る。

「じゃあ雑貨屋のリンさんの所へ行ってみようか」

 イケオジと男装の二人がならんで歩く。

「お久しぶりですね、レイン…くん?」

 リンさんがぱっと明るい笑顔で出迎えてくれた

「やはりか、男装が好きかで反応が変わる可能性はあるがどうやらソレはNPCに効くようだ」

「そうなんだ」

 リンさんの反応を見て私も納得する。

「レインくん、ユウさん、何かご入用ですか?」

 笑顔が眩しい。

「それじゃあ釣り竿と餌を2個ずつ」

 ユウが答える。

「かしこまりました!はい、こちら2セットです。また来てくださいね」

「釣りでもしながら話そうか」

 とユウの提案を飲む。

 早速近くの水場で釣り糸を垂らす。

「ふー、RPは楽しいけどレインの前でオジサマやるの違和感あって疲れたー」

 いつものユウの声になった。

 オジサマ姿でいつもの声のユウがはしゃいでいる、凄い光景だ。

 それからしばらく釣りを楽しんだ。

 オジサマアバターの理由やバーバラさんとの話で盛り上がった。

「それじゃ私はここで落ちるねー」

「うん、また明日」

「またー」

 ユウと別れ、自分のワールドに戻る。

 

「落ちる前にソフィーちゃんの所に行ってみよう」

 中央都市に戻りソフィーちゃんのお店に向かう

「ソフィーちゃん、こんにちは」

 ボイスチェンジャーを付けたまま話しかけてみる

「きゃっ、レイン……くん?すごくかっこいいよ」

「ありがとう、嬉しいよ」

 ソフィーちゃんの手を取る、顔がいつもより赤いような気がする。

「今日は何かご用事?」

「近くを通ったから会いに来ただけだよ」

 と嘘をつく。実際用事は無かった。

「会いに来てくれて嬉しいわ、また近くに来たら会いに来てね」

「うん、じゃあね」

 ソフィーちゃんの反応がいつもと違った。

 それに好きな男装を褒められて気分が乗った私は他のNPCに会いに行った。


 食料品店のアイネさん、雑貨屋のマリンさん、司書のサラさん。

 みんなそれぞれ反応は違ったけど全員好意的で嬉しかった。

 「これが【NGF】」

 今まで生産一筋でNPCとの関わりなんてあんまり気にしてなかった。

 今まであんまり興味なかった戦闘職もやってみようかな、なんて思った。

 私の【NGF】は今日が始まりの一日だったのかもしれない。




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