表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/13

001

 ノエルタリア。

 彼女は夢を見ている。

 棕櫚の葉が揺らめき、白壁の家々が連なる一大オアシス、ナハシャ国、都の中心にそびえる黄金宮殿の地下、奥深く。

 鉄格子に囲まれた黴臭い小部屋で、鉄の鎖につながれて。


 南側の壁だけに、横に細長く伸びた小窓が設けられている。

 天井近くを横に這う鉄柵つきのこの窓から忍び込んでくる銀色の月光……今、この部屋を照らし出す唯一の光源。

 床に散らばるノエルタリアの白い巻き毛のひとふさ、その巻き毛がからまった足首、大理石でできているかのような冷たい質感を漂わせる、その肌の上できらめくルビーとサファイアのアンクレット。

 冴えざえとした月の光の帯が直接映し出しているのは、これだけだった。


「…………」

 夢うつつのまま、ノエルタリアは不意に身じろいだ。

 アンクレットは月光のスポットライトから退き、かわりに五つの桜貝を嵌め込んだような爪をもつ、足指が現れた。


 暗闇の中で、彼女は眉をひそめていた。

 銀色の長いまつげは、あまりにきつく閉ざされすぎたまぶたのため、優美な弓なりの曲線をゆがめられていた。

 かすかに震えてさえいた。


 ……助けて。

 全身が痛い。苦しい。息ができない。

 ああ、だれか。

 わたしを救って。助けて。痛くて苦しくて、たまらないの。


 だれになにを訴えても、どうにもなりはしないと経験で思い知っていながら、それでもなお、何者かに救いを求めずにはいられなかった。

 だれか……たとえそれが何者であろうと、かまわない。

 この思い殻を取り去って。因果な転生を終わらせて。


 だれか、脱皮を手伝って!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ