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禍々しき侵食と囚われの世界【読み切り版】  作者: 悠々
第二章 結界都市陥落編
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結界都市陥落編──エピローグ──

結界都市陥落編──エピローグ──


 勲章式典と言っても、会場となるような建物はあらかた倒壊しており、野外での決行となった。

 無事勲章の授与が終わり、キリヒトが壇上に立つ。


「本日はこのような機会を設けて頂いたこと、そして祝福してくださった方々、何より今日勲章が授与された戦士達、皆さんに感謝の言葉を述べさせていただきます」


 気がつけば周りには多くの人が集まっていた。

 討伐戦に参加した兵士が勲章授与式典で復興作業から離れているため、人々がこの式典に集中しているのだ。


「えー、この場を借りまして私事ではありますが皆さんに伝えなければならない事があります」


 全員の視線がキリヒトへと向けられる。


「本日をもって、私キリヒトは、フォーラム騎士団団長の座を辞任致します」


 会場がざわつく。

 もちろん、ユズルもこのことは知らなかった。


「今回の討伐戦で、足に深い傷を負ってしまいました。私はもう、皆と一緒に前線に出て戦うことができません。ですが、」


「最後に皆で、この村の仇を打ててよかった。今までありがとうございました」


 そう言って頭を下げた時だった。


「──俺達にはキリヒト団長が必要だ!」


 静まり返る会場内に一人の声が響いた。


「そうだそうだ!」

「戦えなくたっていい!今度は俺たちが団長を守るから!」


 その声は徐々に大きくなり、やがて団長コールが起こる。


「……こんな俺で、戦えない奴が団長でもいいのか?」

「戦える、戦えないなんか関係ない!あんたが今まで築いてきたものはそんなものじゃないだろ!」

「っ、」

「俺たちは今まで何度も団長に助けられ、支えられてきたんだ!これからは、俺たちが団長をサポートする番だ!」


 キリヒトの目から涙が落ちる。

 それを見て、ユズルも肩をすくめる。


「お前ら……これからもよろしくなっ!」

「それはこっちのセリフだぜ、よろしくな、団長」


 観衆から拍手が起こる。

 中には涙を流す者もいた。

 この村は、暖かい所だな。そう思うのだった。



「ここにいたのか」

「……ユズルか」


 遠くから、宴の音が聞こえる。

 式典後、被害の少ない港付近で宴が行われていた。


「明日、この村を出ようと思う」

「……そうか」


 キリヒトの隣に腰を下ろす。

 目の前には夜の真っ黒い海が拡がっていた。

 果てしなく広い海を目の前にして、ただただ静かに時間が過ぎていく。

 戦いの疲れがまだ癒えていないのだろう。

 夜風にさらされたユズルは夢の中へと落ちていった。


「……ありがとうな」


 眠るユズルにそう語り掛けたのだった。



「ありがとうございました!」

「お世話になりました」


 早朝。

 村の外れには、二人を見送る人影があった。


「気をつけてな」

「お二人共、色々とありがとうございました」


 そうだ、とユズルは振り返る。


「アナーニさんやミカエラさんにも……あとレーネさん達にもよろしく伝えておいてくれ」

「分かった。……本当に俺が貰っていいのか?」


 キリヒトの手には、ユズルが使っていたクリストロン装備が握られていた。


「その足じゃ移動は難しいだろ?使ってくれ」

「……ありがとう」

「それじゃあ!」


 二人に別れを告げ結界の外へと出る。

 目指すはここより西方に位置するウィズダ村。

 王都、及び魔都に向かうにはその村を通る必要がある。

 振り返ると、海の水面に太陽光が反射して町中を照らしていた。



「さぁ!新しい冒険の始まりだ!」



「……行っちゃいましたね」

「……ああ」


 見送る二人の背中が見えなくなる。


「さあ、私達も家に戻りましょ」


 ティアナは体の向きを変え歩き出す。

 その手をキリヒトは掴んだ。


「……キリヒト?」

「……戦いが終わったら、ずっと言おうと思っていたんだ」


 キリヒトの顔は真剣だった。

 まるで一世一代の大勝負に出る時のような鋭い、けれどどこか優しい目でティアナを見ていた。


「──俺と、結婚してください」


 答えはもう、ずっと前から決まっていた。


「はい!」


 キリヒトとティアナ。

 二人の物語は、この先も共に紡がれていくのだった。




 第2章 決壊都市陥落編 完──




「ユズルさん、次はどこに行くんですか?」

「目指すは魔都、だけどそこは最後に行き着く場所だ」


 ユズルはまだ魔王に挑むには早すぎる。

 もっと世界を知り、あらゆるものを知る必要がある。 

 果たして次に明かされる真実は何なんだろうか。

 剣の秘密か?魔人化の謎か?それとも……


 それは、まだ先のお話である。 




 彼らの旅は、続くのだった──。


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