魔王に覚醒……?
「先生。お願いがあります。私達のクラン『白銀の翼』に入ってください」
エリスが言う。
「エリス『白銀の翼』の噂は聞いている。多くの難易度の高いクエストをこなす新進気鋭のクランだってのも。だが、俺は今まで実戦経験なく象牙の塔で教師をやっていた。君たちのお荷物になるだけだ。気持ちだけ受け取っておくよ」
俺はエリスの提案を断った。
「アーサー!! それは駄目だ! 私たちと一緒のクランに入るんだ!」
ミラーカが俺の手を握ってきた。
「ミラーカ……」
俺はエリスの方を見る。
「分かってくれ。俺は君たちには格好悪い姿を見せたくないんだ。もし、君たちが昔の教師時代の俺に憧れているのなら俺をクランに入れない方がいい。嬉しいことに君たちは俺を超えたんだよ。教師としてこれ以上嬉しいことはない。だから俺は帰るよ」
俺は立ち上がり再び帰ろうとする。
するとまたエリスが俺を引き止める。
「アーサー! 待ちなさい! 帰るならキスしますよ!」
とハァハァ言いながら俺の体を止める。
「お、お、おぅ……」
エリス……一体なにがあったんだ……昔は大人しい性格だったのに。随分積極的になったな……
俺は席に戻る。
「先生。心配することはありません。先生は魔王様なんですから」
エリスは真顔で言った。
「えっ?」
「そうだぞ。アーサーキミは魔王なんだ。凄いユニークスキル持ちなんだ」
ミラーカも同意する。
えっ? 一体どういうことなんだ……俺は焦る。二人の表情は真剣そのものだ。ふざけている感じじゃない。
二人ともどうしたんだ。まさかヤバい宗教にでも入ったんじゃ……
俺の冷や汗がますます酷くなる。
「先生のユニークスキル。マテリアライズがありますよね。あれが魔王の使う魔王術の一つの形なんです。先生なら魔力を直接吸収するマジカライズも使えるハズです」
エリスは真顔で言う。
えっ? これなにかの冗談か? マジカライズ? 魔王術? そんなもの初耳だぞ。大丈夫なのか? エリス。ミラーカ。
「失礼します。お嬢様」
と腰の曲がった老婆が部屋に入ってきた。
「ミスティアさん!」
とエリスが声を弾ませる。ミスティアさん? ナイトブリッジ家の執事か? いや、なんだか占い師みたいな格好をしてるな。見るからに怪しげな……ミスティアはなんだか民族衣装のような服装をしている。
「ホッホッホ……! こちらが魔王様ですか。まぁお若くて可愛らしい」
と言いながら入ってくるミスティアさん。
いやいや怪しいって……
「ではミスティアさん。あれを手に入れることが出来たのですね」
エリスが聞く。
「あぁ出来ましたとも。こちらが魔王を覚醒させる鍵。村正です」
と言うとミスティアさんは一振りの剣? のようなものをテーブルに置いた。
細身の曲刀か……この国のものではないな……しかも鞘が良くできている。一種の工芸品だなこれは……
俺はそう思っているとエリスが言う。
「アーサー。あなたにはこの刀を抜いてもらいます。この刀を抜けばあなたは魔王として覚醒します」
と。
俺はその刀と呼ばれた曲刀を見る。
これを抜けば俺が魔王に……
本格的にオカルトめいてきたな……
「さぁ! アーサー! 抜いてください! あなたなら抜けるハズです!」
エリスは言う。
えっ? これ大丈夫か? このミスティアさんという人。騙されてないか? まさかエリス。俺に振られたショックで危ない宗教にのめり込んだんじゃ……
「あっ……あぁ……」
まぁとりあえずやってみるか……俺は刀を手に取る。そして柄を握りゆっくりと……
ゴクリとツバを飲み込むエリスたち。
「ゴメン。硬くて抜けない」
俺は言うとみんなズッコケた。
「もう。アーサー! ちゃんと抜いてください。アーサーならできるハズですよ」
エリスが言う。
「でもなぁ……これ封印でもしてあるみたいに……」
俺がそう言いかけると
「巨大な魔力を検知しました。マジカライズを発動します」
と脳内に突然言葉が響いた。
「えっ?」
俺は刀を見ると刀が光り輝いている。
「アーサー!」
エリスが叫ぶ。
! 強烈な魔力が俺の魔力回路を伝って流れ込む!!!
「うあああああ!!!!」
パシュ! その刀は光になって俺の胸に吸収されるようにして消えた。
「えっ?」
「えっ?」
刀消えたんだけど……
「アーサー。刀をどう……」
エリスがそう告げた瞬間!
「おおおおあああああ!!!!!」
全身に電流が走るように痛みが走った!!
痛い! 痛い! 体に異物が入ってる!!
「ああああああ!!!!」
俺は叫んだ。
「エラー。自我を持つアーティファクトは変換出来ません。体内の魔力を使いヒューマナイズを実行しますか?」
と脳内に女性の音声が聞こえる。
「頼む! 助けてくれ!」
と俺が叫ぶと。
「了解しました。ヒューマナイズを実行します」
と脳内で声が聞こえた。
すると体内から光が放たれ空中にその光が集まる!
「これは……」
エリスが呟く。
するとその光はやがて人間の女の形になった。空中に浮く人間の女。服装はなんだこの服は。これは東洋人の服か?
その女はプカプカ浮いている。
「はじめましてやなぁ。魔王さま。んーーー!
久しぶりに人と喋ったわ。外に出してくれておおきに。あー空気美味しい。うちミヤビと申します。ま、とりあえず皆様。よろしゅうおたのもうします」
とその女性は頭を下げた。
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