ざまぁ展開 アガサ学長の絶望
「アーサー先生を返せ!!!」
「アーサー先生を返せ!!!」
「学長は説明責任を果たせ!!!」
「学長は説明責任を果たせ!!!」
「授業を再開しろ!!!」
「授業を再開しろ!!!」
「街のみなさん! どうか助けて下さい! 我々はレイモンドによって日々セクハラを受けてきました。それを学長に話しても全て隠蔽されました。なかったことにされたんです。アルケイン魔法学校は腐りきっています! 多くの人の力が必要です! 署名を集めています!! どうか魔法学校の不良教師たち追い出せるよう力を貸してください!!」
アルケイン魔法学校の女子学生のフレデリカたちは街を練り歩きシュプレヒコールあげていた。
その様子を震えながらアガサ学長は見ていた。ここはアルケイン魔法学校の学長室。国からの税金を不正に私的流用した豪勢な学長室だ。
最近ニュースを聞いた。この学校の元教師であるアーサーが強大な力を手に入れて一国の国王になったと。そして、巨大なドラゴンを従えていると。
それを聞いてアガサ学長は震えが止まらなかった。アーサー先生は私達のことを許してないだろう。アーサー先生が巨大な権力を持った今、指を弾くだけでアガサ学長の首は飛ぶだろう。もちろん物理的な意味で。
このアルケイン魔法学校があるレムリアの国ではレイモンドのせいでアガサ学長の評判は地に落ちてしまった。もはやアガサ学長のことを庇ってくれる人は誰もいないだろう。
失敗した。もっとアーサー先生に媚を売れば良かった。アガサ学長は今更ながらそう思った。
思い返してみればアーサー先生は結構タイプだったのに……どうして私はレイモンドなんかに騙されて……本当に最低な男。アーサー先生にしとけば良かった。レイモンドがこの学校に入ってきたばかりに……アーサー先生がセクハラをしたという嘘までついて! 私の方が被害者じゃない!
アガサ学長は自分自身も加害者であることはすっかり忘れていた。全ての責任をレイモンドに押し付けていた。そして、いつの間にか私はレイモンドに騙された被害者として自分の過去を勝手に改変していた。
すると
トントン。学長室の扉がノックされた。
「はい。どうぞ」
アガサ学長は震える声を隠しながら返答した。
「失礼します。学長」
そこに現れたのはフレイヤだった。聡明にして活発。アーサー先生が抜け、レイモンドが休職し、ニナ先生が風俗で働き始めた、その抜けた穴をフレイヤが一手に引き受けていた。
フレイヤはまさに三面六臂の活躍をしていた。しかも、給料は据え置きのままで。アガサ学長はフレイヤが学生思いであると分かっていた。だから、アガサ学長はそれを利用してフレイヤに訴えた。
今教師たちが辞められては学校が潰れる。だから協力して欲しいと。学校が潰れたら困るのは学生たちだ。だから協力して欲しいと訴えた。給料は今はないが必ずみんなのその働きを評価する! と。
必死の説得だった。だが、アガサ学長が心配していたのは自分の地位だけだった。レイモンドが学生たちにセクハラしまくっていたのを隠蔽したり、学校の裏金を私的流用したり、やりたい放題していた。それがその証拠だ。
アガサ学長にとってこの学長の椅子は心地よかった。学生なら騙すのは容易い。イジメ隠蔽もお手の物だった。その心地よい椅子を手放したくない一心だった。
フレイヤたちは学園に残ってくれた。この学園のピンチを救うのは自分たちだとやる気になったようだ。心底バカな奴らだとアガサ学長は思う。
自分たちの教師人生をすり潰し精神的、肉体的に壊れたとしてもそれはあいつらの自己責任だ。また新しい教師を入れればいい。アガサ学長にとってそっちの方が良かった。今の教師たちはアガサ学長に対する不信感が強い。そんな奴らは早く潰してしまった方がいい。
目の間にいるフレイヤもオーバーワークでいつか壊れるだろう。そっちの方がいいのだ。フレイヤはもともと聡明で、アガサ学長の企みに薄々気づいているだろうから。
アガサ学長の椅子を脅かす存在だ。そんなもの早く潰れて消えてもらった方がいい。全部面倒くさいことは教員たちにやらして、全ての責任をニナやレイモンドに押し付ける。そして、アガサ学長は学校のピンチを見事な舵取りで乗り切った人間として再評価されるのだ。
アガサ学長はほくそ笑む。このピンチを作ったのは紛れもなくアガサ学長であるのだが、アガサ学長はそのことはすっかり忘れていた。
「申し訳ありません。学長。今月いっぱいで退職させていただきます」
フレイヤは言う。
えっ? アガサ学長は驚く。こいつなにを言ってるんだ。いや……いずれ使い潰そうと思っていたが今じゃない。オイ! フレイヤおまえは一体なにを言ってるんだ。
「フ……フレイヤ先生なにを仰ってるんですか? 今の学園の現状をご存知ですよね。あなたが辞めたら……どうなりますか?」
アガサ学長はフレイヤの罪悪感を刺激する。今、水魔法、土魔法、光炎魔法を教えているフレイヤがいなくなればこの学園はとんでもないことになる。本気で学校として成り立たなくなる。
「はい。分かっています。ですが、私は私のキャリアや健康状態を心配する必要があります。私達にも家族がいます。申し訳ありませんがこの学園の経営に関しては学長が全ての責任を負います。私達教職員ではありません。私達の自己犠牲のみで学園の危機を押し切ろうとする学長のやり方には不信感を覚えます。他の教職員も同じように学長に対して不信感を抱いています」
フレイヤは堂々として言う。
アガサ学長は思わずたじろぐ。駄目だ……フレイヤを失ったら……どうすれば……
「で、では! どうしたらいいのですか? どうしたら学園は立ち直ることが出来るのですか!!」
アガサ学長は叫ぶ。
「申し訳ありませんが、この学園の危機を招いたのも全て学長の判断ミスです。アーサー先生を証拠もなく冤罪で追い出した。そのことはこの国中に知れ渡っています。挙句の果てにはイジメの隠蔽、教師によるセクハラの隠蔽、裏金の私的流用。これら全ての問題はアガサ学長あなたから出たものです。はっきり申し上げます。問題はアガサ学長! あなた自身です。問題が問題を解決出来るハズもありません。全ての責任を認め、大人しく周囲の人びとの断罪を受け入れて下さい。はっきり言いますがアガサ学長。あなたが全ての問題の原因です」
フレイヤは容赦なく言い放った。
!!!
その言葉にショックをうけるアガサ学長。自分がこれだけ恨まれていることが衝撃だった。
「なにを……これからフレイヤ先生はどうするおつもりですか?」
アガサ学長は声が震えている。
「アーサー先生に呼ばれています。モントバーンに新しい学校を作るので来て欲しいた。給料は今までの5倍にしてくれるとのことです。申し訳ありませんが、私は私を評価してくれる人たちのところで仕事をします。生徒をダシに使ってやりがい搾取をするようなところでは仕事は出来ません。では」
と言ってフレイヤは学長室から出ていった。
バタン。閉められる学長室のドア。
アガサ学長は呆然としていた。
するとアガサ学長は急に目に涙を貯めて
「うわああ!!! 酷い!! 酷い!! どうしてあんなとこ言うの? 酷いこと言われた!! 酷いこと言われた!! 私が問題だって言われた!!!」
「うわあああああああああ!!!!!!」
アガサ学長は泣き出した。泣き声が学長室に響く。アガサ学長は子供の頃からこうだった。困ったことがあるとウソでも泣いて誤魔化す。そして、正論をぶつけた人間を悪者にする。自分を泣かせたあいつが悪いんだと。
「うわああああああああああ!!!! 酷い!! あんなこと言うなんて!! 酷い!!」
アガサ学長は本能的に周りの同情を引こうとする。だが、アガサ学長を慰めてくれる心の優しい人は誰もいなかった。
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