戦う理由
サシャたち貧民街の人々は武器を手に入れるために行列を作って歩き出した。サシャはその先頭に立ちみんなを導いている。
「おい。なんだありゃ……」
「あんな大勢でどこに行くんだ……」
サシャが率いる群衆が貧民街の人々の注目を誘う。
「おい! お前ら! どこに行くんだ!」
貧民街の人々がサシャ率いる群衆に聞く。
「この街を守るためにドラゴンを倒すんだ! そして国王に俺たちの力を見せつける!」
群衆の一人がそう言った。
「えっ?」
「そんな……」
「倒せるのか?!」
「俺たちになら出来る!」
サシャ率いる群衆の一人はそう告げた。
「おい……あいつら本気みたいだぜ……」
「でも……」
「俺は行くぜ」
「私も行く!」
「本気か……あいつら本気でドラゴンを倒しに……」
「そんな……」
「あいつらに出来るのなら……俺にも」
「私も!」
多くの人々が少しづつサシャ率いる群衆の中に参加する。そしてまるで雪だるまを転がすようにいつの間にかその群衆は何千人ほどの巨大な群衆になっていた。
サシャはその群衆を率いて歩く!
◇
「いいか。お前ら。もし、貧民街の連中が押し寄せてきたら容赦なく矢で撃ち殺せ!」
衛兵隊長が部下の兵士たちにそう告げる。
ここは貧民街から二級市民の居住エリアへと繋がる道。そこに衛兵たちはいた。人数は数名ほど。目的は貧民街の人々の閉じ込めだ。
「はい。分かっています」
兵士たちはそう答える。
「おい、あれはなんだ……」
兵士の一人がそう指をさす。指を指した先にはサシャ率いる貧民たちの大群が群れをなして歩いて来ていた!
「あんな……多すぎる……」
兵士の一人が言う。
「矢の準備をしろ! 大群といっても烏合の衆だ! 矢を一本撃てばすぐに逃げ出す」
衛兵隊長がそう指示した。
矢をつがえる衛兵たち。
「よし……命令があるまで撃つなよ……オイ! そこで止まれ! これ以上進むと撃つぞ!」
衛兵隊長は群衆にそう叫んだ。
「俺たちは敵じゃない! ドラゴンが間もなくここに向かってくる! お前らも殺されるぞ!」
ディドリッグがそう叫んだ。
すると兵士たちが互いに顔を見合わせた。
「ドラゴンが……」
「えっ?……嘘だろ」
「嘘じゃない! 高台に言って東の空を見上げてみろ! 凄まじい大群だ!」
ディドリッグが叫ぶ。
「嘘をつけ! そんな報告は受けていない! おい! 止まれ! それ以上進むな!」
衛兵隊長が叫ぶ。
「なにをしている! 衛兵たち! 私達はドラゴンを倒しに行くんだ!
邪魔をするな! あなた方のやるべき仕事は街を守ることだろう! 我々を殺すことが仕事なのか! ここを通せ! 自分の職務を思い出せ!」
サシャがそう叫ぶ。
衛兵たちの表情に動揺が走る。衛兵たちはお互いの顔を見合わせた。
「構わない! 撃て! 撃て!」
衛兵隊長がそう叫ぶ! 弓を引き絞る衛兵たち。だが撃てない!
「おい! どうした! なにをしている! 撃て!」
衛兵たちは矢をつがえたまま固まっている。
「私達の邪魔をするな!! この街は私達の街だ!」
サシャがそう叫ぶと群衆から
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
と歓声が上がった。
「撃て! 早く……」
衛兵隊長は群衆のあまりの勢いに小声になる。
群衆たちはどんどん衛兵たちに近づいていき、そして衛兵たちの目前まで行き、そして衛兵たちの間をそのまま通り過ぎた!
その衛兵たちの間を通り過ぎた瞬間群衆たちから
「おおおおおおおおおおおおお!!」
と言う歓声が上がった。
「おい! ふざけるな! どういうことだ! なぜ矢を撃たなかった!」
衛兵隊長は衛兵たちの胸ぐらを掴んで叫ぶ。
「撃てませんでした」
衛兵がそう告げた。
「お前!」
衛兵隊長が拳を振り上げ、ドゴン! 衛兵にパンチをした。ドサッっと倒れる衛兵。するとすかさず群衆の一人が衛兵隊長の顔面にバコン! とパンチをした。
よろめく衛兵隊長。続けざまに他の群衆が衛兵隊長めがけてパンチや蹴りを浴びせた。
動かなくなる衛兵隊長。
群衆の一人が殴られた兵士に手を差し伸べた。
「大丈夫か? 一緒に行こう」
と。
◇
俺は高台に立ちドラゴンの群れを眺めていた。こっちの武器は一振りの日本刀。向こうは数えれないほどの爪とブレスを持つブラックドラゴン。
脳を焼かなければこの異常な光景には耐えられないだろう。
だが、不思議なことにモントバーンの街の命運はこの俺、たった一人の異邦人に委ねられていた。
俺がここで逃げ出せばモントバーンの住民はドラゴンによって皆殺しになるだろう。
……俺の脳裏に良からぬ考えがよぎった。なんの思い入れもない街を……顔もよく知らない人々を助けるために、なぜ、俺は命を賭けるのか? と。
このまま逃げ出しても誰からも責められないだろう。ここを素通りさせても誰もなにも言わないだろう。
恐怖で体が動かなかったと。自分が命を賭すような戦いじゃなかったと。
だが、俺には力がある。ドラゴンを打ち倒す力が。この力を才能を誰が俺に与えたのか分からない。神かそれとも悪魔か。
剣を抜くべき時を間違えてはならない。力を使うべき時を見誤ってはならない。
俺でなければ倒せない。戦う理由なんてそれで充分だ。
俺は一歩前に出た。
そして
「マテリアライズ!」
俺は地面の岩から一本の槍を作った。その槍を手に取る。そして自分の持てる全ての力を使って魔力と筋力をその槍の投擲に集中させる!
ボコン! 俺の筋肉が隆起した。そして俺は
ドゴンッ!
大砲のような勢いでその槍をドラゴンの群れに吹き飛ばした!
ギャヤギャギャギ!! と凄まじい音をたててドラゴンの群れに飛んでいく槍。
それが巨大な光の矢になってドラゴンの群れを襲う! ドギャン! ドラゴンの群れを突き抜ける俺の槍。数十匹ほど俺が放った槍によって絶命し力尽きて空から落ちた。
「グオオオオオオオオオオオ!!」
槍を投擲した俺に向かって襲いかかるドラゴンたち!
さぁ。剣を抜くべき時が来た。あとはこの戦いの勝利が全ての善と悪を決めるだろう。
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