ざまぁ展開 失神するレイモンド
大教室にてアーサーの代わりに授業をするレイモンド。レイモンドは焦っていた。アーサーのやっていた授業のレベルが高すぎたのだ。
「えっ? あいつどれだけ難しいことやってたんだ」
と呟きながら砂で魔法陣を作るレイモンド。
「せんせー。いつになったら終わりますか?」
と生徒の一人が聞くと生徒たちからドッっと笑いが起きた。
「いや、あのもう少し……」
全身冷や汗まみれになりながら魔法陣を作るレイモンド。
「先生! 私がやりますね。見ててください」
女子生徒の一人が教壇に歩み出た。
「その砂を渡して頂けますか?」
女子生徒はそう言い、レイモンドから砂の入った壺を受け取った。
「砂よ! 魔法陣となれ!」
女子生徒がそう言うと壺に入っていた砂はフワッっと空中に舞って床に落ちそれがひとりでに魔法陣を形成した!
「いでよ! ゴーレム!」
そう女子生徒が言うと魔法陣からゴーレムが召喚される。
目を丸くして驚くレイモンド。
「魔法陣の自動生成なんて基本ですよ。先生。今どき自分の手を使って魔法陣を作るなんて」
と女子生徒が言うと生徒たちがドッっと笑った。
「えっ? あっ! そんな魔法は……教科書の何ページ……」
ペラペラと教科書をめくるレイモンド。あいつこんな高度なことを生徒たちに教えていたのか?!
「アーサー先生だったらなぁ……はぁー退屈」
アクビを噛み殺す生徒たち。それを聞いてクスクスと笑う生徒たち。
「ふっ! ふざけるな! アーサーはセクハラ教師だ! 新米教師のニナ先生に無理やりキスをしたんだ! あいつの名前はもう出すな!」
レイモンドが生徒たちに叫んだ。
「あー先生。それは良いんで早く授業をやってもらって良いですか? さっきからまーーったく授業が進んでないですが」
女子生徒がそう言うと生徒たちはまた爆笑した。もはやレイモンドはこの教室において敵だった。
ワナワナ震えるレイモンド。レイモンドを笑う学生たち。
「おい! やっぱりあいつおかしいじゃないか! 教科書に載ってない魔術を教えるなんて! 禁断魔法じゃないのか?!」
と斜め上の攻撃をするレイモンド。
すると女子生徒の一人が
「教科書の234ページ」
と言った。
「234ページがなんなんだ!」
怒鳴るレイモンド。
「いいから見てください!」
女子生徒が叫ぶ。
「なにあの教師大声出して」
「怒って無能なの誤魔化そうとするのマジ気持ち悪い」
「さいてー」
生徒たちから聞こえるか聞こえないかぐらいの声で口々に罵声が浴びせられる。
「くっ! あっ! 234ページだな!」
レイモンドは土魔法の教科書の234ページをパラパラとめくる。
「あっ!」
あった!
「砂魔法の魔法陣自動生成の手技について」
とそのページには書かれていた。あいつこんなとこまで教科書を読み込んで……
レイモンドがあっ! と声を上げたのが可笑しかったのか生徒たちはクスクスと笑いだした。
「なにが禁断魔法よ。そんなことも知らないでよく教師やれたわね」
「生徒から教えてもらってばかりじゃねーか! 先生! あんたがこの椅子に座った方がいいんじゃねーか?」
「本当! 生徒からやりなおしたら?」
爆笑する生徒たち。
「いい加減にしろ! 貴様ら!」
ドンッ! っと教卓を叩くレイモンド。生徒たちが静かになる。よしっ! 教師の威厳を取り戻せ! とりあえずキレろ! レイモンド! しょせん17〜18のガキどもだ! 大人の怖さを見せつけたらなにも言えないハズだ!
「大人を舐めるんじゃねぇ! なにがアーサー先生の方が良かっただ! アーサー先生は性犯罪者なんだよ!!」
怒鳴るレイモンド。静まり返る生徒たち。
よしっ! 黙らせた! 言うことを聞かせることが出来た! これで……
「生徒を舐めてるのはあなたの方です! レイモンド!」
とフレデリカが立ち上がった。
えっ? なんだあいつ……いま俺怒鳴ったよな……怖くないのか……レイモンドはそう思った。
「あなたお金を貰って教師をしてるんですよね! そんなあなたがまともに授業も出来ない! 知識もない! 生徒に対する敬意もない! ハッキリ言います! そんなあなたに授業をして欲しくありませんわ!!」
フレデリカがそうキッパリと叫んだ。
すると学生たちから
「そうだ! そうだ!!」
「そうだ!! そうだ!!」
と建物が揺れるかと思うばかりの生徒たちの怒声が響いた。
血の気が引く。レイモンド。
「アーサー先生を返せ!!」
「このセクハラ教師!!」
「最低! あんたがアーサー先生をハメたんでしょ!!」
口々に罵声を浴びせる生徒たち。
プルプル震えるレイモンド。
「お前……名前は……?」
フレデリカを睨みレイモンドは言った。
「フレデリカですわ! フレデリカ・ド・ラ・キュスティーヌですわ!」
「覚えておこう! では授業は自習だ!」
と言ってレイモンドは教室から逃げ出した。
「えええええええええええ!!!!」
と声を上げる生徒たち。
「自習って!!」
「学校の意味ねーじゃねぇか!!」
「ちゃんと授業しろよ!!」
生徒たちの罵声を背中から浴びせられるレイモンド。全身に冷や汗をかきながら廊下を歩く。
クソっ! クソっ! なんなんだ! あの生徒たち! そんなに俺が気に入らないのか! しかしなんだあのボス的なフレデリカは!!
あの大人をバカにしたような態度! 絶対に許さない! 理由をつけて学校から追い出してやる!!
レイモンドは怒りながら教員室に向かった。
◇
「大丈夫ですか? お嬢様」
フレデリカの侍女ミアはフレデリカにそう聞いた。
「大丈夫ですわ! 聞きましたか? ミアあいつの捨て台詞を!」
「はい。恐れ多いことにお嬢様を脅迫してました。それに大声を上げ生徒たちを威嚇し無理やり従わせようとする。あのような人物教師の風上にも置けません」
ミアは言う。
「その通りです。あいつはこのフレデリカを脅迫しました。言葉ではなく力で従わせようとしました。ならば、こちらも力を使い相手を従わせましょう。どうでしょうか。ミア。これは権力の乱用になりますか?」
フレデリカがミアに尋ねる。
「いえ、フレデリカ様。正しい力の使い方でございます。横暴に権力を使うものを成敗する。そのための王家の力です」
ミアが言う。
「レイモンド……このフレデリカを怒らせたことを後悔させて差し上げますわ!」
フレデリカがそう告げた。
◇
バタン! レイモンドは学長室のドアを開けた。
「レイ……モンド先生。どうしましたか?」
アガサ学長がそう言う。
「全くなんですか! あの生徒たちは生意気な! 教師に対する礼儀も知らない!!」
悪態をつくレイモンド。
「レイモンド……いやレイ。授業が上手く行かなかったのですか?」
「あぁ! そうです! 特に生意気なあの金髪の女に邪魔されましてね。あーー名前……なんだっけな……あいつの名前……」
「そういえばレイ。あなたも知っているとは思いますが念の為。あのクラスには王族に連なる貴族の令嬢がいらっしゃいます。くれぐれも失礼なきよう」
アガサ学長がアドバイスをする。
「えっ? 王族?」
レイモンドは一気にテンションが低くなる。知らなかった……レイモンドは青ざめる。
「そうです。名前は……そう。フレデリカ・ド・ラ・キュスティーヌ様です。特徴的な金髪の」
アガサ学長が言う。
えっ? さっきその女に脅迫まがいのことをしたんだが……ガクガクと膝が震えるレイモンド。
「王家に睨まれたらもうこの国では生きていけません。フレデリカ様は絶対に怒らせないでくださいね。怒らせると我々など一生拷問部屋行きですからね」
レイモンドの目の前が真っ白になる。フッっと意識が遠くなってレイモンドは床にバタン! と倒れた。
だが、レイモンド、アガサ学長、ニナの絶望はまだまだ始まったばかりだった。
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