そのままじゃ幸せになんてなれないて言われても私に変わる力は残っていないし
私はいつまで囚われているんだろう。
ありがとうございました、と離婚調停を終え、疲れが滲みながらも
すっきりとした顔のクライアントを送り出し、
私はまた心の中で溜息を吐いた。
恋人って、そんなに簡単にできるものなんだろうか。
そんなに信頼できる人が、私なんかに近づいてくれるんだろうか。
当然のように付き合い結婚していく友人を見送るたび、
私はいつも心の中の薄暗い感情を増やしていく。
弁護士として働き始めてはや3年。
この3年間、何度も離婚に関する相談を受けた。
どろどろに揉める顧客もいれば、
なんとすれ違いを乗り越えて離婚しないという選択を取る夫婦もいた。
私はそのまるでドラマのような美しい相思相愛を目の当たりにするたび、
自分をすこし嘲笑する。
彼氏いない歴年齢の私。
別に顔は可愛くなんて無くて。
痩せてないし、胸も大した大きさじゃないし。
顔に自信がないからモテテクやあざとテクなんて使えないし。
駆け引きは苦手で。
あんなこともこの年まで引きずっているし。
だから、私には彼氏なんてできない。
普段は人が隠している嫌な感情は無視して過ごしているし、
わりとすぐに人を信頼してしまうけれど、恋愛に関して私は相手を信頼できない。
だって。
相手が裏切らないなんて保証どこにあるの?
勿論誠実な人だってたくさんいるけれど。
そんな人は私に振り向いてくれないと思う。
もっとかわいい人に行ってしまう。
私の相手になってくれる人なんて、きっと芯が通らない人。
簡単に乗り換えて、お前が悪いと私の悪いところに文句を付けてさっさと捨てていくひと。
誰だって、そんな人かもしれない。
だから私には恋人がほしいという感情は表面上なくて。
でも確かに恋愛に憧れはあって。
週末はカップルエッセイに浸り、悪役令嬢転生ものを楽しみ、
悪役令嬢もので存在を知り手を出してみたスマホの乙女ゲームのイベントを楽しんだり。
でもその当事者にはなれなくて。
時折それが悲しくてもどかしいけれど、どうしようもなくて。
いつまで私はこんなことにとらわれ続けているんだろう。
あの子のせいだ、とすこしあの子を責めたいけれど、
あのときはチョロすぎて考えなしだった私自身に非があることもちゃんとわかっていて。
そもそもあの子と私は始まってすらいなくて、
たまに無知すぎる女の子が引っかかる罠に引っかかっただけなのに。
顔に自信がないなら、痩せてメイクを研究して、可愛くなればいい。
胸がないなら本気でバストアップの下着を試せばいい。
……知りたくて身体が苦しいのなら、
別にこだわってないで顔だけはよくて誰とでも寝る男とちゃっちゃと致してしまったらいい。
知ってるよ。
だけど現実の人間は、漫画やドラマみたいに簡単に変われないんだよ。
だって、私にそんな力残ってないから。
結局、今のまま進まないでいるのが一番安全で傷つかなくて、
疲れないから。
時折ふっと湧くしょうもない幻想を掻き消しながら、私はまた毎日を続ける。