閑話〜辺境伯の呟き〜
あれはもう3年も前なんだな…ボロボロの女の子だった
街の入口の衛兵が報告にきてな、ステータスチェックで召喚された人って出てると
慌てて、屋敷に連れてこさせて
身奇麗にすれば、黒髪の可愛らしいお嬢さんだった
何か出来るか聞けば、魔法は使えないが料理は得意だと
コック預かりにして、使用人の仲間入りをさせたら
それはそれは美味しい食事を作ってくれた。
うちのコックにも惜しみなくレシピを教えてくれたと
あの子は、自分の価値が分かっていないんだな…不安だ
儂も年をとった、あと30年若ければ…いやいや
籠の鳥にはするまいて。
カフエだかきっさてんだかやりたいって夢を語ってたあの子の顔は輝いていたからの
儂の使用人になり3年経った、個別の面談の時にようやく頭金が貯まったと、借金だけどお店が開けそうだと言われてな
良かったなと言った時のあの子は嬉しそうだった
しかし、あの時この領地の常識をもう少し教えていればこんな事には…
使用人にこっそり様子を見に行かせれば
満席だったと
商品名はよく分からなかったが絵が書いてあって
屋敷でも出たメニューだったと
しかも安い!
この屋敷では砂糖や調味料なんかも好きに使えたが街ではそうもいかん
領民には食べるのに困らない様な税にしてある
ただ、嗜好品は高価だ
価格設定も色々間違えておる
どうやらスキルが開放されたらしい
うちの影が見てきたそうだ。
人手が足りてないと。
小さな喫茶店なのに…と報告があがった。
商人ギルドにそのうち求人を出すだろうと
しかし、あれではどこか遠くの違う常識の所から来たと言っている様な物だと仕方ない
ギルドへの根回し、街の人へも領主権限で彼女を守ってここでの生活を楽しく過ごせるようにと巧く根回しするかのぉ
それから、儂は今のうちに人材を探しておくとするかの
おい、影よお土産は無いのか?
買い物はしていないと…そうか
今度は頼むよ
なに?自分で行けと?
分かった、護衛をつけていくかの
儂、領主なんだけど…
分かっておる
この気安さがお前が影で居てくれる理由であろうて。
本日は、後ほど本編更新予定です。