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特別国庫管理部  作者: 安曇 東成


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三章 二 最も昏き闇より出でしもの


 事務所に戻り、自席に着くと左前の古城戸に文句をぶつける。


「なんだよあの依頼は。親子の写真を撮ってこいだと? 写真なんてCG合成で作ってしまえばいいんだ」


 古城戸は苦笑いする。


「諦めなさい。あれは安納総理からの根回しなのよ。あの親子は気づいてないでしょうけどね」


 俺は呆れる。


「安納総理が元旦那だってな? 出世のために差し出した元嫁のためにってことか? いらぬおせっかいもいいところだろう」

「私はそういうの嫌いじゃないけどね」

「それはそうと、盤古(バンコ)対策はどうなった?」


 夢に侵入するなら盤古(バンコ)に備える必要がある。古城戸はクリアファイルから一枚の紙を取り出すと俺に渡してきた。


「色々考えたんだけど、こいつを使おうと思うの」


 俺はその紙に目を落とす。以前見た、古城戸の兄が古城戸を操って現世に呼び出した魔物のうち一体の情報のようだ。


No.013 饕餮(トウテツ)

No.013は収容所の六メートル×六メートル×六メートルの部屋に確かに棲んでいます。

部屋には明かりがついているにもかかわらず、部屋に立ち入ると周囲はほぼ視界が無い闇となります。

No.013が生物かどうかは、まだ判明していません。

収容された部屋に入った複数の作業員は、闇にも関わらず一瞬目の端にNo.013と思わしき生物を目撃したことが報告されています。

その姿は、作業員により異なりますが、羊や馬、牛といった動物の一部と人間の組み合わせがほとんどです。

また、共通していることは直視しようとすると見えなくなるという点です。

No.013がいる部屋に立ち入った作業員は全員が己の居場所を見失い、自力での帰還が不可能となりました。

これまで四十七名の作業員がNo.013の部屋に入り、出てきていません。バイオセンサーの通信情報では四十七名は死亡しています。

命綱を付けた作業員7名のみ、帰還することができました。

作業員の報告によると、闇に包まれている間、周囲の音が一切遮断されたということです。

その後の実験で、No.013を三十メートル×三十メートル×三十メートルの部屋に移動させたところ、影響範囲は部屋を満たしました。

さらに、千メートル×千メートル×千メートルの部屋に移動させたところ、影響範囲は部屋を満たしました。

また、暗闇の中においてはNo.013は移動に距離の概念がなくなるという多次元干渉の現象が見られます。

外界に出た場合、外界すべてがNo.013の勢力圏となる可能性があります。絶対外に解放してはいけません。


 報告を読み、俺は悪寒を覚えた。なんだこいつは。闇という概念が命を得たような存在だ。


「よくこんな危険な魔物を所有できたな?」


 古城戸は腰に手をやった。


「兄の能力を忘れたの? 魔物を支配して、私の所有物にしたんだわ。兄の能力には何者も抵抗できなかった」


 そうだった。古城戸の兄はすべての王たる支配の能力だ。古城戸が夢から持ち帰るための「所有する」という条件を満たすのは簡単だったろう。だが、その兄も太歳(タイソエイ)に殺された。


「それにしてもヤバすぎる。なんだこいつは?」


 古城戸は少し自慢げになる。


饕餮(トウテツ)は中国の伝説の妖怪で、四凶の一角と言われているわ。なんでも食うっていう奴で、中国では魔物すら喰らうということから魔除けのシンボルになったりしているようね。伝説とは色々違う点はあるけど、饕餮(トウテツ)を入れた部屋に盤古を誘導できれば勝ちじゃない?」

「細かく指摘したい点は色々あるが……方向性自体は賛成だよ」


 確かに報告内容からは、盤古といえど饕餮(トウテツ)の闇からは脱出不可能だと思えた。誘導するには俺たちが饕餮(トウテツ)の部屋に入る必要があるから、命綱は必須になる。それに闇の中では声が聞こえないそうだから、中で意思疎通ができないことも考慮しなければならない。


 古城戸は俺が賛成したのを受けて、細かい作戦を打ち合わせたいと言った。その後、綿密に打ち合わせをして、作戦は決まった。暗闇で音も聞こえないから命綱からの触覚で伝達する。三回引いたら脱出。四回引いたら綱を切って逃げろ。五回引いたら無事。特殊部隊とかならモールス信号みたいなものでコミュニケーションするのだろうが、一般人に毛が生えた程度の俺たちはそんな上等なことはできないからこの程度のシンプルな合図でやり取りするしかない。



この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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