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特別国庫管理部  作者: 安曇 東成


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二章 五 一角獣


 翌日、俺と古城戸は港区にある実験施設に来ていた。研究員二名に連れられて、地下の部屋まで移動する。

 案内されながら隣の古城戸に聞いてみる。


「昨晩はお楽しみで?」

「うん。 警視庁の上層部の人達の宴会に混ざったんだけどね。新宿の戦国武勇伝ってお店」


 俺たちは一応警察身分を与えられているので、警視庁の人達との付き合いもあるのだ。その筋で古城戸に声がかかったのだろう。警視庁側も古城戸が特別国庫管理人だということは知らない。


「へぇ? 名前が時代物っぽいけどどんな店なんだ?」

「部屋の名前が『伊達政宗の間』とか『真田幸村の間』とかね。昨日は大人数の宴会だったから『関ケ原合戦大宴会場』だったかしら。メニューの名前も凝ってたわね」

「そんな和風な店なら着物が映えるだろうな」

「知っていればそうしたかもね。でも面白かったわよ」

「そりゃあよかった」


 そんな話をしているうちに、目的の部屋に到着した。

 その部屋は十五メートル四方で一ヶ所窓があり、動物に給餌するためのような扉が壁の下部に設けられている。

 俺は窓の中を覗き見たが、何もいない。この部屋は使われていないようだ。だが、古城戸は同じ窓から明らかに何かを見ている。


「何かいるのか?」


 俺はもう一度窓の中を覗くが、やはり何もいない。

 古城戸は俺のほうを向いた。


「ユニコーンよ」

「ユニコーン? 一角獣のことか? 見えないぞ」


 俺は目を凝らしてみるが、やはり見えない。

 古城戸は窓から離れ、通路の壁に背を預ける。


「男と女の視神経は少し作りが違って、同じ赤を見ても、男と女では見え方が違うらしいわよ? ユニコーンはね、女の視神経には白くみえるけど、男の視神経には映らないんだって」


 なるほど、俺の視神経には映らない生物なのか。よく見てみれば地面にうっすらと影は落ちている。


「影は見えるな」

「猟師は影を見て捕まえたとかいうわね。本体は伝承どおりの姿ね」

「ユニコーンといえば、純潔の乙女が好きというのは?」

「ユニコーンは鉄の臭いが嫌いなのよ。血は鉄分を含んでいるから鉄の臭いがする。そこから来た話じゃないかしら。鉄の臭いが嫌いな動物は結構いるけどね」

「どっちにしろ空想上の生き物だから、科学的な説明よりも『そういう生き物』と言われるほうが納得できるな」

「言わんとすることはわかるわ」


 それよりも、気になったことがある。


「それはそうと、生物を夢から持ち帰られるのか?」

「ペットや家畜みたいに、所有権があるものについては可能ね。そのあたりは散々検証したわ。空想上の生き物も、所有という形になればできる。このユニコーンとかね」


 質問の本命はこれからだ。


「人間は?」

「わからない。できたとしてもやるつもりはないかな」


 古城戸の声のトーンが下がる。


「人間は検証していないのか? 人間が可能なら、歴史上の英雄や死人も現世に連れてこられるってことだよな」

「『雷沢帰妹(レジグマ)』の因果的には、私が彼らとそういう関係になればあるいは、ってところね」

「はは、いいじゃないか。例えば織田信長の愛人になれるなら文句も無いだろう?」


 古城戸は腕を組んで目を細める。


「百歩譲って愛人になるとして、誰が織田信長の夢を見るのよ?」

「歴史研究家とか、見てもおかしくないと思うがな」


 古城戸は肩をすくめ、呆れたように返す。


「まず見ないわね。面識の無い人物の夢はよほど因果が近いところにないと無理だもの。ちなみに現世で生きてる人やペットは持ち帰り対象にならないわね。目が覚めるとき、自分の肉体に戻ってしまうから」


 その後は、古城戸の所有物になったユニコーンがどれくらい命令に従うとか、ユニコーンの体毛や爪の取得の手伝いなどをした。

 四角いトレイにユニコーンの毛が一房あるらしいのだが、やはり何も見えない。裸の王様のような気分だ。もし落としてしまったら拾えないな、などと考える。


 帰り際、俺は古城戸に一つ質問をした。


「古城戸が車とかバイクを出したり消したりできるのは知っているが、今日のユニコーンも同じようにできるのか?」


 古城戸は小さく頭を振る。


「生物は死ぬまで消えない。無機物はいつでも消せる。検証したわ」

「なるほどな。じゃあ追加で確認。例えば心臓ペースメーカーが埋まった犬を出した場合、心臓ペースメーカーだけ消せる、ということか?」


 古城戸は検証済みだとばかりに頷く。


「えぇ。その通りよ。骨や歯は無機物のようだけど生きているから消せない。でも例えば虫歯治療で埋めたような銀歯は消せるわ」

「植物も同じってことだよな?」

「植物も出したら枯れるまでは消せないわね」

「そうか。境界線としては細胞核があって活動していると無理ということなんだな」

「大体そうなんじゃない? それ以上は別に検証しなくていいかなと思うけど」

「そうかもな」


 そう言って、その日はそこで現地解散となった。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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