精霊竜と使役竜
精霊竜について。
精霊竜とは、精霊達と共棲してその精霊の力を得て強くなっていく竜の総称。
共棲する精霊の属性である精霊魔法を使いこなし、精霊の数が多いほど強くなっていく。
精霊達と共棲する事を己の力とする事から、逆に精霊と共棲出来なければ巨大な自分の体を維持出来ず、いずれは力尽きてしまう事になる。
竜の主となった人間は、基本的に己の伴侶の竜が扱える精霊魔法を使えるようになる。
全ての精霊竜は風の属性の精霊魔法を扱える。それ以外では己の生まれ持った属性である精霊魔法と、もう一種類程度が普通。
風の属性を持った竜は、移動速度が特に早い。
全ての属性魔法を使えるようになるには、最低でも成竜以上の年齢が必要となる。
しかし、竜の主となった人間ににその魔法の適性が無ければ、下位の魔法であっても使う事が出来ない場合もある。
特に、光の精霊魔法はその傾向が顕著に現れる。
精霊竜は、全身を鱗で覆われ長い首と長い尻尾を持つ。尻尾の先には数本の棘を持つ。後脚は大きく前脚は後脚よりもかなり小さく短い。二本の後脚で身体を起こして立つ。
首回りには、長い毛の鬣を持つ。
背中には飛膜のある翼を持ち、飛ぶ事が出来る。しかし、竜は風の精霊の加護を得て飛ぶのであって、鳥のように翼で羽ばたいて飛んでいる訳では無い。
扱う事の出来る精霊魔法は、年を経るごとに強大になっていく。
己と共にある精霊達の知識を自分のものに出来るので、長生きしている竜ほど知識も豊富となる。
人の言葉を喋り文字も読める。総じてとても賢い。
寿命は長く、千年以上を生きると言われている。
精霊竜には、明確では無いが年齢に応じた位があり、それにより呼び名も変わる。
自分よりも上位(年上)の竜には絶対に逆らえない。これは、いわば本能のようなもの。数十年程度ならば誤差の範囲だが、百年以上になると確実に実力に差がつく。
精霊竜は、喉元の鬣の中に、霊鱗と呼ばれる精霊を宿す為の大きな鱗を持つ。
霊鱗は、精霊達と共棲する為の媒体となる大切な鱗で、文字通り精霊竜の命ともいえるもの。これを破壊されると、自分の巨体を維持出来なくなり、ものすごく弱る。時間をかければ回復するが、回復が不可能なほど破壊されると命を失う事になる。その為、普段は見えないように鬣で隠されている。
成長と共に霊鱗の数も増える。
精霊竜の位について。 (ただし、これにはかなりの個体差がある)
子竜。
十歳前後までの竜。
爪が生え揃い、産毛が抜けて鱗も生え揃う。まだ片言程度で長い言葉は喋れないのが普通。少しくらいなら飛べるようになるが、まだ長距離は飛べない。
子竜の間は、基本的に甘えん坊。遊ぶ事も大好きで、時には自分の尻尾にじゃれついてまで遊ぶ程。
精霊との共棲は、生まれた時から始まっているがほとんど無意識、その数は圧倒的に少なく、精霊魔法もまだ殆ど使えない。
若竜。
百歳程度までの竜。
翼が次第に大きくなり、飛ぶ事が巧みになる。身体もどんどん大きくなっていく。
成長に伴い共棲する精霊の数も増えていき、精霊魔法を完全に使いこなし上位の精霊魔法も使いこなせるようになる。
言葉を完全に理解して、話す事も出来るようになる。知識も豊富になっていく。
主を得るのもこの頃から。
でも、まだまだ遊ぶ事が大好き。
成竜。
概ね五百歳程度までの竜。
若竜よりも翼も身体も大きくなり、知識も更に豊富になる。精霊魔法の威力は若竜よりも更に強くなる。複数の上位の精霊魔法も使いこなすようになるのも、この頃。
あまり遊ばなくなり、落ち着いた貫禄を持つようになる。
竜同士で番になるのもこの頃から。ただし、主を得た竜は、その間は番を持たない。
老竜。
五百歳以上の竜。
ファンラーゼンの守護竜である、フレアは八百歳を超える老竜。
多くの知識を持ち、若竜や成竜とは桁違いの数の精霊達を操る。精霊魔法の強さも桁違いに強くなる。
古竜。
千年以上の時を生きた竜。
身体や翼の大きさも、共棲する精霊達の数も、何もかもが桁違いの圧倒的な強さを誇る。
現在、人の世界にいる古竜は、ブルーのみ。
古竜のみが扱える、雷の属性を持つ。ブルーの放つ青い稲妻に抵抗出来る者はこの世界にはいない。
圧倒的な力を持つ、竜の最上位種。
使役竜について。
人に飼い慣らされた竜の総称。卵で生まれる。
使役竜は一般的に二種類いて、ラプトルと呼ばれる二足歩行の竜と、トリケラトプスと呼ばれる四足歩行の竜がいる。
精霊の守護は無く、言葉を話す事は出来ない。
翼は無く、寿命は120から150才程度。死ぬまで大きく成長する。
特に、50才から100才ほどが、一番性格的にも落ち着いて騎竜としての評価が高い時期。賢くなり、人の言葉も殆ど理解して指示もよく聞く。
逆に、十代の若い騎竜は気が荒い事が多く、制御するには乗り手にもそれなりの腕が必要となる。軍隊の前線で一般兵が乗るのも、十代から二十代の年齢の騎竜が多い。
それ以下の人を乗せる前の子竜は、ものすごい甘えん坊で、また別の意味で扱いが難しい。
ラプトル。
走る事に特化した、二足歩行の竜。前足はごく短い。やや長い首と丸めの胴体から先が細くなる長い尻尾まで続く、綺麗な流線型の体型。後ろ足は太くて逞しい太腿と、長く細くてしなやかな脛を持つ。四本の指を前に三本後ろに一本で立ち上がっている。指の先にある湾曲した爪は大きく硬い。地面をしっかり掴んで走る為、早く走れる。
後ろ足には大きな鉤爪が付いていて、身を守る武器となっている。
移動の際に乗る騎竜として、多くの旅人や商人、軍隊などで欠かせない存在となっている。人ならば二人は乗る事が出来る。大きな個体だと馬車を引く事も出来る。
首元に、鱗が変化した細い毛の鬣を持つ。全身を覆う鱗は小さく硬い。
体高(背中までの高さ)が、大体160から170セルテ程度。大きい個体だと2メルト近くになる。
全長(鼻先から尻尾の先まで)が、まっすぐに測ると3メルテから4メルテ程度はある。
背中に複数のベルトで固定した鞍を乗せ、口に銜を噛ませて手綱を装着する。
体色は、緑色と茶色の二種類がある。鬣は白い。
トリケラトプス。
鼻先と両目の上辺りに、合計三本の大きな角を持ち、首回りに扇状に広がったフリルを持つ四つ足の騎竜。
大きな個体だと、全長8メルトにもなる。
体色は、やや薄い茶色や灰色が多く、稀に緑色の個体もある。
蒼の森にいるトケラは30才ほどでまだ小さく、体高が1、5メルテ、全長でも4メルテに少し足りない程度。また、トケラは薄い茶色の体色をしている。
大きな体だが基本的に優しい気質で、世話をしてくれる人には特によく懐く。力持ち。
馬車や竜車を引くことが多い。軍隊では、工兵隊と共に、地面をならしたり木を切り倒した後の切り株を起こす際に重宝される。ラプトルのように前線へ出る事は殆ど無い。
オルダムへと続く街道の坂道は、トリケラトプスの引く乗合馬車が多く行き交っている。