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四代将軍とも外伝  作者: 山田靖
なでしこ公方様異聞
27/33

四代将軍源とも、島人ヌ血風録!(中)

 琉球国乗っ取りを謀る悪党、曚雲もううん阿公くまきみ利勇りゆう

 忠国の志士・舜天しゅんてん縫王女ぬいわんにょを奉じ反撃の狼煙を上げる。

 天下分け目の大決戦!風雲急!

 飛び込んできたは、謎の美少女・宝龍ぱおろん

 舜天の父、サムライ・ハチローに何やら曰く有気?


 サムライ・ハチローは既に伝説である。三十年前、やはりこの運天港うんてんこうに漂着した大和人やまとんちゅ。雲を衝くような豪傑、だが凛とした品格も備えていた。中山ちゅうざん尚寧王しょうねいおうはハチローを手厚く持て成し、武芸指南役に任じた。実戦経験豊富なハチローに鍛えられ、中山兵は大和のゲンペーにも比する最強部隊へ変貌。鬼神の如きハチロー軍団!素朴な戦しか知らぬ北山ほくざん南山なんざん、一溜りもなく粉砕された。尚寧王、悲願の琉球統一を成す。この功により、サムライ・ハチローは浦添うらぞえ按司あじに封じられ王族の娘を妻に娶る。そして生まれた子が舜天である。

 武功第一のサムライ・ハチローだが、やはり大和人は敬遠された。本人もわきまえていたし、根っからの武人である彼はまつりには疎かった。偏屈な性格も災いしたであろう。次第にハチローは首里城しゅりじょうに赴かなくなる。妻を亡くしてからは増々頑迷となり、家督も舜天に譲ってしまった。曚雲・阿公の暗躍には流石に黙っておれず諌言したが、かえって王の不興を買う始末。手塩にかけた兵達からも排斥される。殊に己が抜擢した、軍団長・利勇の裏切は堪えた。琉球はハチローをついには受け入れなかったのだ。

 もうどうでもよい、勝手にしろ!ハチロー出奔。現在は牧港洞窟ていらんがまに独り隠棲の身である・・・



「それ見たことかっ!言わぬことではないわ!」

 ハチロー、怒髪天を衝く!とても古希とは思えぬ大迫力!

「曚雲などというイカサマに翻弄されおって。よりによって利勇の小僧が王となぁ?身の程知らずの罰当たりめ!」

 激昂し、ハチローは大声で泣き出した。ポロポロ滂沱ぼうだの涙を流し、亡き尚寧王を悼む。多感な男なのである。

「舜天、愚図愚図するなっ!直ちに出陣せよ。一刻を争うのだ、集まってる兵だけでよい。わしは正面から攻め、利勇めを野戦に引き摺り出す。なぁに、一捻りだ。その隙にお前は御城ぐすくにかかれ。寡兵をもって突入させ内から火をかけろ。数が多いといえ、奴等は人道に外れた烏合の衆!崩れるのは容易い。未だ囚われておるであろう王族の方々をお救い申すのだ!」

 流石は千軍万馬の猛者、テキパキと沙汰を下す。

 ところでと、ハチローはギロリと目を剥いた。先程からこの軍議の席に妙な連中が控えている。云わずと知れた宝龍様御一行!

「お前の後ろに居るのは何だ?」

「かっ彼等は・・・昨夜の嵐で漂着した、宋の・・・」

八釜やかましいっ!」

 割鐘われがねのような怒号!

女子おなごに異人ではないかっ!琉球国存亡の危機に、かような者共に関わっておるいとまはないっ。・・・その黒いのは何だ、人か?」

「聞き捨てならぬ!」毛受めんじょう、気色ばんで抗議!

 舜天は顔面蒼白、大慌てで両者を抑える。金太きんた大三元だいさんげんは唖然としたまま動けない。

「失礼します」

 宝龍、スックと立ち上がり、そのままスタスタ退出。毛受等も後を追う。

 舜天は面目次第もない。

「父上、何という暴言!宝龍殿には御加勢いただけるとの・・・」

「フン!」ハチローはソッポを向いた


 その夜、運天港の宋船に縫王女が訪ねてきた。ハチローの無礼を詫びに来たのだ。

「ハチロー殿は大和人。異国人の悲哀は、誰よりも身をもってご承知であります。当然、子である舜天様も・・・」

 平身低頭する可憐な王女に、宝龍はゆっくりと語った。

おきなは狭量で困るなぁ。年を取ると頭が固くなる。新しいもの未知なるものが、理解できず受け入れられない。世界の変化についていけなくなるのです。これを“時代遅れ”という。・・・左様、我等は異形の者。まぁ、むべなるかな」

 決してそのような!縫王女は涙目で訴える。

 宝龍は肯き、傍らの金太を差し招きく。全身真っ黒な肌、座していても小岩のような威圧感・・・

「王女、この者が怖いですか?」

 縫王女は震えて顔が上げられない。

「怖いでしょうな、普通の反応です。だけど怖いのは、見た目の判断でしょう?それだけでもう排斥してしまった。ちと早計でないですか。ハチロー翁と同じ、頭が固い。敵か味方か?益か害か?好きか嫌いか?なんてのはもっとよく観察しないと判りません。王女は若いんだから、もっと知ろうよ、受け入れようよ。そしたら、異人なんて怖くない。この金太、祖国では優秀な軍人でした。けどネ、笑うとカワイイ!」

 金太、破顔大笑!白い歯が眩しい。縫王女、でもやっぱり怖い・・・


 ハチローは三百の兵を率い進撃!一方、首里城では二千の軍勢が押し出してきた。多勢に無勢!しかしハチロー、百戦錬磨!手足の如く兵を操る。元より、兵法はハチローが持ち込んだもの。弟子に稽古でもつけるような、余裕綽々であります。加えて「逆賊を討つ!」大義の前に、後ろめたい利勇軍は早くも戦意喪失、潰走を始めた。

 これを城中から眺めていた曚雲、いかぬ!とばかり飛び出し、逃げ惑う兵を叱責鼓舞!戦況を押し戻す。次いで曚雲が大声で呪文を唱えるや、にわかに黒雲が立ち込め突風が吹荒ふきすさぶ。ひょうが降り稲妻が走り、さながら車軸を流したような大豪雨!更に竜巻の中から現出あらわれいでしは、伝説の怪獣・わざわい!津波、土石流!ハチロー軍は瞬く間に濁流に呑み込まれた。呆気にとられ茫然と立ち尽くすハチロー。その刹那、ハチローの脇腹に激痛が走る。ハッと抑えるとヌラリ生温かい鮮血が滴る。南無三、槍が刺さっていた。

「不覚!」

 絶体絶命!

 その時、大きな黒い影がハチローをさらった。何と何と、金太!ハチローから罵声を浴び辱められた、金太ではないか。金太はハチローを担いで一時退却。丘に登ると眼下では激闘が続いている。面妖な!頭を振ってハチローはへたり込む。

 その面前へ立ちはだかるは宝龍、大音声だいおんじょうでハチローを一喝!


鎮西八郎為朝ちんぜいはちろうためとも!」


 おーっと、丁度時間となりました。

 ・・・これから先が面白い!

「島人ヌ血風録!」次回、堂々完結!

 乞う、ご期待!

 なんくるないさーっ!


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