表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四代将軍とも外伝  作者: 山田靖
なでしこ公方様異聞
26/33

四代将軍源とも、島人ヌ血風録!(上)

 めんそーれ!さぁて今宵は、皆様を南国の勝地・琉球国りゅうきゅうこくいざないましょう。薩摩奄美さつまあまみより百里余。灼熱の太陽、遥かなる大海原、星の砂浜。ウージの森に、デイゴの花咲く。泡盛、チャンプルー、ちんすこう。トゥパラーマ、デンサー節、島唄、ハイサイおじさん、涙そうそう・・・大和やまと唐土もろこしの中間に在り、舟楫しゅうしゅうを以て万国の津梁しんりょうとなす、気候温暖にして風光明媚な蓬莱島ほうらいじまであります。

 ところが!この琉球国に今、血生臭い風が吹いてきました・・・


 北山ほくざん中山ちゅうざん南山なんざんの三国が覇を競っていた琉球は、尚寧王しょうねいおうによって統一された。

 尚寧王は英明の誉れ高き名君。しかし、その治世は長くは続きませんでした。運命の暗転は王妃の病。祝女のろ阿公くまきみのお告げににより、尚寧王は禁断の蛟塚みずちづかを暴きます。中から現れた妖僧・曚雲もううん!曚雲は首里城しゅりじょう跋扈ばっこ、妖しげな術を用い宮廷を蹂躙じゅうりんいたします。一方、尚寧王は阿公に篭絡され、まつりを顧みず酒色に溺れる。この機に乗じ曚雲は近衛兵・利勇りゆうを抱き込み反乱をそそのかす。遂に利勇、尚寧王を毒殺!利勇は王に即位、阿公は妃。曚雲は宰相として独裁を振るう。反対者は王族共々惨殺。あまりの手際に革命は城外に一切漏れず、知らぬ間に進行していった。

 しかし、尚寧王の娘・縫王女ぬいわんにょが命からがら脱出。浦添うらぞえ按司あじ舜天しゅんてんに助けを乞う。縫王女悲痛なる訴えに、舜天驚愕!まさか、そのようなことが・・・尚寧王の忠臣であった舜天は、即座にいくさを覚悟。抜き差しならぬ危機も迫っている。曚雲一味の野望、琉球全土を我物わがものなさんとす。ならば早晩、縫王女を追ってこの浦添へ殺到しよう。


 その矢先、時ならぬ嵐が琉球を襲った・・・


 季節外れの嵐が去り、空は雲ひとつなく晴れ渡った。舜天は運天港うんてんこうへと急いでいる。異国の商船が漂着との報。昨夜の暴風雨では、無理もない。しかし、この非常時に!臨戦態勢の最中、飛び込んできた招かざる客。多忙極める舜天だが、おそらくは宋船、ならば粗略には扱えない。

 運天港に停泊するは三十石はあろうかという巨大な船。舜天はそこで、世にも不思議な人々と面会します。乗っているのは六人だけ。人種も年もバラバラの異様な集団であった。先ず驚いたのは全身、墨でも塗ったかのように黒い大男!そして背の低いでっぷりと肥えた老人と若い三名は、漢人であろう。更に奥には華奢な男が静かに座っていた。弁服べんふくに身を包んでいるが、女のような美しい顔立ち・・・いや、どう見ても女だ。はて?男とも女ともつかない、得体の知れぬ・・・あっ!舜天は思い当たった。男であって男でない。そうあれが伝え聞く“宦官かんがん”に相違ない。舜天は従者にそっと囁いた。ところが相手にも聞こえてしまったらしい。

「きゃっ!」

 “宦官”が弾けるように笑った。そして何と驚いたことに流暢な大和言葉を発するではないか。

「違う、違う!宦官ってのはな、男でその・・・無いというか取っちゃうんだ。だから見た目は、ただのオッサンだぞ。でも付いてるもんが付いてないと不具合なんだろうな。どっか歪んでる。気色わるい。決してこんなに見目麗みめうるわしゅうないぞ。我は立派な女子おなご!この格好は変装だ、変装。女と知れると、いろいろ都合が悪くての。まして美人となると危険がいっぱいだ。そうそう名乗りが遅れた、宝龍ぱおろんである。タカラのリュウと書く。パオと呼んでくれてかまわん」

 舜天は赤面し只管ひたすら恐れ入るばかり。怒っている様子でないことに、やや安堵。宝龍は面白そうに小首を傾げニッコリと微笑んだ。

「爺様が“毛受めんじょう”宋の商人あきゅうどだ。欲深でなかなか悪知恵が回る。こっちは水夫で“はくはつちゅん”兄弟でな。よく似てるだろ?見分けがつかん。三人纏めて呼ぶときは“大三元だいさんげん”でヨロシイ。そして黒い大きいのが“金太きんた”背丈測ったらピッタリ六尺!凄いだろ?でもな、彼の国では普通なんだ。遠い遠い暑い暑い国らしい。パオも女にしては大きいから悩んでいたが、安心した。いやぁ、世界は広い。あっ皆の名前、本当は妙竹林みょうちくりんで長ったらしいから、パオが勝手に変えた。憶え易くて良い名だろ?」

 宝龍は黒く大きな瞳で真っ直ぐに見据えて語る。

天竺てんじく行こうと潜り込んだのが、この毛受の船でな。そしたら海賊に襲われるわ、難破するわで・・・悪いことはできん」

 毛受がにこやかに引き取った。

「宝龍様に救っていただいたのです。船を襲われ殺されるところでした。宝龍様は奸計を用い、海賊共を無人島に置去りにして船を奪回!この金太・大三元にしても、奴隷として売られるところ、宝龍様に開放されました。皆の命の恩人です。以来、御供させて頂いております」

 女子の身で何たる大胆不敵!舜天は舌を巻く。

「そんなこんなで、暫く厄介になる。よろしく頼む」

 いや、実は・・・舜天は事態を包み隠さず明さねばならない。戦に巻き込まれる危険を説いた。聞くや、宝龍は眼を輝かせ頬を紅潮させ叫んだ!

「何ィ?主君を大逆たいぎゃくし、あまつさえ王を僭称だとぉ!巫山戯ふざけるなっ!卑怯未練、極悪非道、大謀反人!到底、天の赦すところではないっ!いや、この宝龍が許さん!舜天様、お味方いたす。なんたる千歳一隅!盲亀もうき浮木ふぼく優曇華うどんげの花!此処で逢うたが百年目!これも南無八幡大菩薩なむはちまんだいぼさつのお導きか。なぁに、戦は得意中の得意!この金太も歴戦の勇士なのです。心配ご無用!大船に乗ったつもりで。鎧袖一触がいしゅういっしょく、目にもの見せてくれん!」

 あまりの鼻息に、舜天も断り切れず助太刀を頼む。宝龍一行は意気揚々と船を下ります。

「浦添で籠城?駄目だ、駄目駄目!先手を打って首里を奇襲すべし!攻撃は最大の防御なり、だ」

 道すがら宝龍はすっかり軍師気取りで献策する、献策する!思わぬ事態に舜天は戸惑うばかり。ふと、宝龍が足を止めた。

「あっ、それからサムライ・ハチローに会いたい」

 舜天、動転!

 サムライ・ハチローに会いたい、だとぉ?

 何故、そなたがその名を知っている?

 サムライ・ハチロー、サムライ・ハチローとは・・・舜天の、実の父なのだ!


 琉球王家を簒奪す曚雲一味!

 そうはさせじと、舜天の反撃なるか?国家存亡を賭けた一大決戦!

 風雲急を告げる!

 割って入るは、謎の美少女・宝龍率いるアヤシゲな集団!

 サムライ・ハチローとの因縁や如何に?

 ・・・これから先が面白い!

 次回「島人ヌ血風録(中)」乞う、ご期待!

 にふぇーでーびるっ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ