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旭東帝國奇譚  作者: 主任
第一話
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第一話 後日談

 その後、晃守は車の残骸を跡形もなく破壊し、出来る限り証拠を消滅した後に緋花におぶさって機関の建物まで到着した。

 外見は治ったとはいえ一度は半分以上削られた体である。機能は完全ではなく、触手のみしか動かせない状態であったのでどうにも長距離の移動は出来なかったのだ。

 そんな状態を見て八咫烏は「相変わらず晃守さんは緋花姉さんにおんぶに抱っこだねぇ」と呟いたそうだ。

「で、緋花。あんた今までどこにいたわけ?」

「そこら中にいましたが何か? それにしても機関長は相変わらず小さいですねぇ。それでは男を誑かすなど夢のまた夢ですよ」

「いーんだよ。変態くらいなら操れるから……で、そこら中ってどこさ」

「第二から第九都市ですかね」

「ふーん。ようするに旅行してたってわけ?」

「そのようなものですね」

「困るよーあんたみたいなのに勝手に出歩かれたら姫様に怒られんじゃん。あんた目立つしさぁ」

「そこはご安心を。人間の目に止まることはなかったと保証します」

「あっそ。で、晃守さんはどうだったー?」

「惨敗だ。緋花が来なければ今頃道路を汚すだけに終わっていたな」

「へー」

「へーって機関長、監視してなかったのですか?」

「いつの間にか気絶してた。あと加奈子ちゃんもいなくなってた」

 緋花は訝しげな視線を有姫に注いだ。

「あー、姐さん。それはボクがやったのさ。ほら、晃守さんのあれを見ると精神にかなりのダメージがあるからさ、それを防いだのさ」

「そうでしたね。自分が効かないので忘れていました」

「これだから人外は困るねぇ。配慮というものが足りてない」

「貴女もでしょう?」

「そだね」

 八咫烏は片手に持った袋からスナック菓子のようなものを掴み出し口に放った。

 パリパリと軽い音を立てて食んでいる。

「食べる?」

 八咫烏は緋花にその袋を差し出した。

 袋は無地で、入っているものも一見ポテトチップスかと思ったが何だか妙に色が黒い。

「これは……?」

「第六号を薄切りにして揚げたやつ。意外と旨いよ」

「結構です」

「あっそ」

 八咫烏は遠慮なく次々にそれを食べすすめ、そして袋は空になった。

「あーあ、なくなっちゃった。まぁあいつもその内また現れるだろうからその時また作ろう」

 八咫烏が袋を落とすと、それはさらさらと砂像のように崩れ落ち跡形もなく消えた。

「ところで今回のやつは一体なんだったんだい?」

「怨霊、というやつですね」

 緋花が答えた。

「私の故郷に荒鬼首神社というのがありましてね」

「物騒な名前だな」

「その神社に祭られていたのがどうやらあれのようなのです。先に郷愁に駆られて訪れた時に蛻の殻になった社と幾つかの死体があったのでまず間違いはないかと」

「んん? そんな事件あったなら私たちの耳に入らないわけないんだけど?」

「ど田舎ですので機関も気付かなかったのでは? それに住民もその件のみではないでしょうが一人もいなくなっていたので訪れる者もいませんし、届け出るものがいなかったのでしょう」

 緋花はどこか悲しげな眼でそう言った。

「そしてそれに気付いた私は急ぎ神社にあった文献を読み解き、裏手の墓場で奴の欠けた体を掘り出してこうして駆けつけたというわけです」

「さすがだね!」

「貴女はもう少し動きなさい、有姫」

 ぴしゃりと緋花に叱咤されて有姫は肩をすぼめた。

「ま、まぁこれにて一件落着ってことで……だめ?」

「良しとしましょう」

「やった。じゃ、皆元の場所に戻ってー」

「やだけど?」

「お断りです」

「私も遠慮したいな」

「え」

 この後、侃々諤々非難轟々、すったもんだの言い争いが起きたがそれはまた別の話。


 今回の帝國の被害。

 人命六十九名。内五名はクローン。

 家屋五棟。舗装道路五百メートルに渡る大規模な亀裂及び深さ百二十センチ直径二メートルの陥没。

 今回の帝國の利益。

 有力な神の保持。

 以上、第十機関より第一機関へ報告され、隠蔽及び修復が行われた。

 被害総額約二千万であった。


取り合えずこれにて一話終了です。

次回はまたそのうち。感想や指摘があれば作者は血の煮え滾る柱の男よろしくむせび泣きます。どうぞお気軽に。

ちなみにこの話は基本的な世界観や登場人物は継承しますが時系列ごとに事件や場所や語り部の違うオムニバス形式や一話完結と呼ばれる形で進んでいきますのでぶっちゃけ次の話に今回のことはあんまり関わりがなかったり。

ではでは、またよろしくお願いします。

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