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旭東帝國奇譚  作者: 主任
プロローグ
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プロローグ

 彼らはついに白日の下に晒された。

 我々が危惧していたことだ――いくら進言しても聞く耳を持たなかった政府高官の愚か者どもに責任を擦りつけたり殴りつけたりしたいが、事態はそんな下らないことをしていられるほど緩慢でもない。むしろ落ちるように急速に動いていると言って差し支えない。

 万が一の場合に備えてこちら側に付いてもらっていた彼女、そして我らの帝國姫様がいなければ世界滅亡もあり得たのだから本来ならば事後処理及び今後起こる異常事態に備えなければならずこうしてレポートを書く時間もないのだが、これは私の義務として書いておかねばなるまいと我儘を言って彼女及び私の弟子に諸々の処理を任せている。全く優秀な部下を持ったものだ。

 私は当然のこととして、もはや帝國中……否、世界に住む全ての人々が安全で平穏に暮らすことなぞ出来ないだろう。悲しいことだ。

 今、窓の外には得体のしれない物体が佇んでいるのが分かった。

 部屋の隅の暗がりにも目をやっても何も見えはしないが確かに気配を感じる。それも一つや二つではない。もっとずっと大勢のものだ。

 私のような鈍感な女にも分かるのだから相当な事態であることが理解できる。

 先日起こった『事変』。未確認存在No.01[ The outsider god(外なる王)]と未確認存在No.02[ About black(蒙昧な暗闇)]の衝突は沈んでいた彼等の悠久の眠りを妨げ、活発化させるのに十分過ぎる異変を世界にきたした。

 今私の視界に入るような弱小の未確認存在ならばこの家の設備で対応出来るが、それも時間の問題だと言えよう。

 やがて私や、予算と設備の整っていない対策など濡れた紙ほどにも思わない何かが私の家をまるで麩菓子とも思わずに粉々にすることが推測される。

 その前に私の手元にあるありったけのデータをこのレポート――否、遺言かもしれない、これと共に送る。重要事項も多数含むので厳重に保管されたし。

 さらばだ我が弟子。それと師匠。私はそれなりに幸せだったよ。未練はない。ただ、くれぐれも帝國を頼んだ。君らなら出来る。

 それにしてもああ、あれはまるで、空のような……


 ここで記述は終わっており、後は無数のファイルの羅列が続いている。後日宮内博士の自宅に調査員を派遣したところ、そこには瓦礫の山及びそれに付着した塩水と鱗のようなものが採取された。

 白宰莱蝶(しらつかさ らいちょう)博士の身柄ないし遺体は目下捜索中である。


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