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石版の魔女  作者: チカ.G
本編
12/72

美月ができる事 ー 2.

昨日どうしても今夜の分の予約投稿ができませんでした。

なので今アップしています。予約すると言っていたのに本当に申し訳ありませんでした。m(_ _)m

 朝6時に起きて走って朝ご飯を食べて、とここまではいつもの朝だった。

 けれど、今日からはこのあとが違っていた。

 いままでは夕食のあとでやっていたドナヴァンとの剣の練習と、基礎体力作りのための更なる運動が入ってきた。

 休憩を1時間毎に15分入れてくれてはいたものの、昼食を食べるために館に戻る頃には美月はもうぼろぼろ状態だった。

 そんな美月を見て、バトラシアは器用に片方の眉を上げた。

 「大丈夫?」

 「はぁい」

 「もう少しペースを落としてもらえばいいのに」

 「えぇっと、大丈夫でぇす・・・多分。それに、自分がいかに体力がないかが身に沁みました」

 心配そうに声を掛けてくるバトラシアに、美月は弱々しい笑顔を向ける。

 「ホントに駄目だって思ったらドナヴァンに言いますから」

 「そうね・・・彼もできない事はさせないだろうから」

 少し思案するように顎を指先で撫でながらバランシアは呟く。

 そんな2人の前に、フランが料理を並べていく。

 「ありがとう、フランさん」

 「しっかり食べてくださいね。じゃないと途中で力尽きちゃいますよ」

 「そうね、今日からいよいよ実地訓練でしょ? しっかり食べないとね」

 実地訓練、と言われて忘れたかった事を思い出さされて、美月はがっくりと頭を落とす。

 「・・・そうなんですよねぇ・・・私にできるかなぁ」

 「大丈夫。慣れよ、慣れ」

 「ここで暮らしていくためには必要な事だと思えば何とかなりますよ」

 「それに、ミッキーが望んだ事でしょう?」

 「うぅっっ」

 それを言われると言い返す言葉がない、と美月はがっくりと肩を落とす。

 無理にする必要はない、とバトラシアから言われている。

 それでも美月はこの世界で生きていくためには何事も経験だからドナヴァンに頼む、とバトラシアに言ったのだ。

 だから、今日の午後の狩りも、その一環だとバトラシアは思っている。

 本来の目的はそれではないのだが、失敗した時の事を考えてドナヴァンに口止めをしているのだ。

 「剣の腕は上がってきているんでしょう? じゃあ、大丈夫よ。それにドナヴァンたちも一緒なんだし」

 何かあったら彼らが助けるわよ、とバトラアシアは続ける。

 いつもは美月とドナヴァンだけの訓練だったのだが、今朝の訓練は騎士たちに混じっての訓練だったのだ。もちろん、騎士たちの5分の1のメニューと言うお粗末なものだったが、それでも美月にはきつかった。

 そして、今日の午後、ドナヴァンとスライ、そしてフンバルを入れた4人で出かける事になっている。

 向かう先はこの領主の館から少し南に行ったところにある森だ。

 そこで美月は初の狩りをすることになっている。

 自分で言い出した事なのだが、今更ながら後悔しまくっている事は内緒だ。

 「ほら、食べましょう」

 「いただきまぁす」

 手を合わせてそう言うと、美月はフォークを手に取り昼食を食べ始めた。





 薄暗い森に足を踏み入れると、途端に周囲の雰囲気が変わったのが判る。

 少し肌寒くなり、美月は着ていたローブの前をきちんと閉めてフードを被った。

 「気をつけろよ」

 「ん、判ってる」

 右手に長さ1メートルほどの剣を持ち、左手に小さな盾をもって美月は前を歩くスライとフンバルに着いていく。そんな美月の背後にはドナヴァンが周囲を警戒しながら歩いて行く。

 「スライ、あまり変なのを見つけるなよ。今日の目的を忘れるな」

 「はいはい、判ってるって。ミッキーの手に負える獲物、だろう?」

 「そうだ。だから、でかいのは止めとけ」

 探索をかけているスライにフンバルが注意するが、そんな彼に不満の声を美月が漏らす。

 「えぇ〜、おっきな狼とかカッコいいと思うんだけどなぁ」

 「そうだな、確かに狼種は従えるにはいい獲物だ。けどな、おまえ、自分の手でなんとかできるのか?」

 「・・・・無理」

 「だろう? だから、でっかいのは止めとけってドナヴァン隊長は言ってるんだよ」

 「くうぅっっ」

 悔しいっっ!

 その思いを込めて美月はじろりとスライを睨みつけるが、どこ吹く風といわんばかりににやりと意地の悪い笑みを返してくるだけだ。

 「それで、どこに向かってるの?」

 「そうだな・・・この森の中で獲物が見つからなかったら、別の場所に移動した方がいいかもな」

 「森の中の方が小さい獲物は多いと思うぞ。リスくらいがいいんじゃないのか?」

 「草原に出ればウサギもいるぞ?」

 「どっちにしても無傷で捕まえられるかって事だけどなぁ」

 「リスとかウサギって・・・・」

 そんなもの捕まえたとしても美月の役に立たない気がするのだが、前を歩いている2人は結構真剣に話している。

 ムッとした顔で前の2人を見ている美月に気づいたドナヴァンが苦笑を浮かべて口を挟む。

 「まぁ、とりあえずこの先にある洞窟まで進んで、それまでに何も見つからなかったら西の草原の方に抜けよう」

 「そうだな。それで無理だったらまた出直せばいいしな」

 「それでもできればミッキーの『初めてのおつかい』までには手に入れたいんだけどな」

 「そういや3日後だったっけ、ミッキーが『初めてのおつかい』に行くのって」

 前の2人が暢気に話をしているが、それでもきちんと探索を掛けているのはさすがは騎士だけある。

 それでも本人の前で『初めてのおつかい』『初めてのおつかい』と連発されるのは面白くない。

 しかし、確かに2人が言うように『初めてのおつかい』は事実であるから文句を言っても言い返されるだけだと判っているだけに、美月は2人を睨むだけで余計な事は言わない。

 今日の狩りは、美月のためのものだ。

 彼女が使役するための獲物を捕まえるための狩り。

 そのために美月は今日まで頑張ってきたのだ。

 彼女に使役というスキルがあるという事に偶然気づいた時、ドナヴァンに何か使役したいと打ち明けた事が発端だった。

 使役できる何かがあれば、それが美月の手助けをしてくれるのではないか、と思ったからだ。

 美月がそれに気づいたのは、本当に偶然だった。





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