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シンプル・ギフト

作者: まいにくん

ニュー速VIPワナビスレ投稿用

 一体どれだけの月日が流れたのだろうか。

 久しぶりに開いた両目に真っ先に飛び込んできたのは、見渡す限りの緑であった。

 私は果てしなく広がる森を、小高い丘の上から眺めている。

 そろそろいいんじゃないか、と思ったので、百万年ぶりか、一千万年ぶりか、あるいはそれ以上の年月放置していた自分の体を立ち上がらせ始める。私にとっては一瞬の判断と決心だったのだが、あっという間に月が二度満ちてしまった。

 まず顔面を除いて体を覆っている大木を、内側から引き破る。これもほんの数秒の事のように思えたのだが、体が完全に自由になるまで季節が一度巡ったようだ。油断して居ると新たに芽吹いて体を這い上がってきそうだ。

 そこから立ち上がるのにボキンボキンと体の節々が鳴った。あまりの大音声に周囲の木々がなぎ倒れたが、すぐ新たな木々が立ち現れそれを補いはじめた。流石にこれは一瞬で元通りとはいかず、私は少し安心する。

 目にも止まらない早さで色を変える空は、昼と夜が溶け合って夜明け前のように見える。

 太陽と月の軌跡が、金色のリングとなって薄暗い空に輝いていた。月の満ち欠けはチカチカと明滅して見える。

 うんとのびをする。

 一面の木々が紅葉する。

 ふうとため息を吐いた後には元の緑色に戻っている。

 ゆっくりと、鼓動するように木々が色を変える様は、見ていて面白かった。

 そんな、のほほんとしている私の目の前に、突如、銀色の壁が現れた。

 何かと思ってよく見ると、それはどうやら白金でメッキされているらしく、私の体と近い大きさで、表面にはこう文字が彫られていた。

「めかみさま へ そろそろ たいよう か しゅみょう てす」

 女神になったつもりはなかったが、起きたタイミングは神がかっていると思った。もう少しでも寝坊していればアウトだっただろう。そして、眠る前に、その時がきたら私に知らせるよう彼らに頼んでおいて正解だった。彼らは本当に有能だ。

 見ると、金色のリングは心持ち太くなっているような気もする。

 遥か昔、気まぐれに不老不死なんてものを手に入れた私は、すぐに取り返しのつかない事をしてしまったと悟り、とても後悔した。

 しかし、私がこの孤独を受け容れる事で、世界が、彼らが救えるのなら、それもいいのかもしれない。

 そんな事を考えながら、

 私は羽ばたいて空へと飛び去った。

シンプル・ギフトという題名は、清水大輔作曲の同名の吹奏楽曲から。曲ありきで書いた作品ではなく、書き上げた後にイメージに合いそうな曲を考えた。

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