第二十二話
宣言通り、続きを投稿致します。今回も三本です。
もしよろしければ、感想・評価を下さい。お願い致します。
☆
“紅玉の台座”、その麓近くで、教団の僧兵たちが密かに動いていた。
「良し。予定通り、二名はここの封鎖を頼む。残りの者は教会と、その付近をくまなく調べよ」
ゼピュロスが号令をかける。
部下たちは一斉に礼の姿勢を取り、順次、自分の役割に走っていった。
その中で、
「ゼピュロス様は、いかがなさるのです?」
秘書が、尋ねてきた。
ゼピュロスの部下の中でも、一番の忠臣。おそらくは、この身を案じているのだろう。
正直に言えば、護衛についてくるに違いない。
「うむ、少し気になることがあってな。何、大したことではない。気が済んだら、わしもすぐに合流する。それまで、部隊の指揮を頼むぞ」
その言葉に、秘書はわずか不満そうな顔を見せるも、
「わかりました。先に行って、お待ちしております」
そう言って、他の者達と同様、自分の役割に走っていった。
――ふむ…… 勘付かれてしまったかの
苦笑い。
だが、結局は命令を聞いてくれた。
そのような者だからこそ、守らねばなるまい。
身を案じているのは、こちらも同じなのだから。
ゼピュロスは林の方を眺めた。
――何なのじゃ、この違和感は……
巨大な火柱が見えて以降、林は静寂そのものである。
もし何らかの争いが起こっているのなら、もう少し予兆があってもいいはず。
だが、それがない。
――それにこの、視界に陽炎がかかったような感覚は……?
それは、余程意識を集中しなければ見逃してしまいそうなくらいの、まどろみ。
現に、部下たちの誰もが、このことに気付いていなかった。
――向こう側の気配が感じ取れぬ…… 結界、か?
夜霧が、もやもやと蠢く。
まるで、異世界にでも通じているかのようだ。
この先、何が起こるかわからない。何があるかわからない。
そんな場所に、大事な部下を連れて行くわけにはいかない。
故に、
――行くか……
ゼピュロスは、一人、闘いの場へと踏み込んだ。
☆
『ありがとう』
そう呟いて、赤い光の中で老人は息を引き取った。
それを見送る、ナタス。
死者に礼を言われる、そんな奇異な事態に、やれやれ、と溜め息を吐いた。
茫と消えゆく、赤い光。
コトン、と何かが地面に落ちる。
「これは…… 魔法石?」
地面には、透明なビー玉のようになった魔法石。
魔法石は、魔力を篭めると赤く発光するが、それが尽きると光を失い、透き通るという性質を持っていた。
「何故、こんなものが?」
思考を巡らせる。
と、その答えには、簡単に思い当たった。
「そうか、魔法生物を動かしていたのは、魔法石だったんだな……」
ナタスは一人呟く。
「脳に直接、魔法石を埋め込むことで、外部から操作されることもなく動いていた、というわけか」
考えたものだ。
これならば、ただの操り人形には留まるまい。
脳に作用すれば、生前のような動きもするかもしれない。
そう考えれば、あの老人が、かようなまでに精密な動きを見せたことも納得できる。
「オオカミたちが光っていたのも、そのためか……!? いや、待て……」
ふと、思い出す。
“赤い光”――“魔法石”。
確か――。
「……」
ナタスは向こう、アリアムたちが闘っているだろう方角を見た。
「急いだ方が良さそうだな……」
苦戦、しているのだろう。
そうでなくては、これを聞くことはないのだから。
向こうから、“あの歌”が、流れてくる。
いかがでしたでしょうか?
第二章最大の盛り上がり、その一歩手前って感じなのですが……
だいぶ伏線を回収し始めていますが…… やっぱり下手ですね、僕は。伏線を敷くのも、回収するのも……
未熟なのは常々痛感してますが、ここまで才能がないのかと思うと……
やれやれ、ですね……