第二十話
「そろそろ、良いでしょうか?」
とそのとき、突然シルファの口元がつり上がった。
同時に、ピアスの光が増す。
「アリアム、避けてッス!!」
「え!?」
条件反射のように即座に跳んで避けるアリアム。
先程までアリアムの立っていた場所に、泥の弾丸が突き刺さる。
「く…… これをどうにかしないと」
セレスと二人、ジグザグに走り回りながらアリアムは打開策を探す。
二人の後を追い、次々と地面に着弾していく弾丸。泥を巻き上げ、小さな粒となって服に、顔に、降りかかってくる。
このまま走り続けていても、どうにもならない。
アリアムは駄目元で、訊いてみた。
「セレス! 炎の魔法ってどうやるの!?」
「は!? アリアム、なに考えてるッスか?」
叫びながら返される答えに、ややのじれったさを感じて、アリアムは声を荒げる。
「決まってるじゃない。泥を吹き飛ばすの!」
「アリアムには無理ッスよ! 出たとこ勝負でできるような魔法じゃないッス!!」
「やってみなきゃわからないでしょ!」
ああもう、とアリアムが珍しく毒づいた。それほどまでに焦っているのだろう。
二人を追う泥の弾丸は、相変わらず雨あられと降り注いでいる。
そのうちの一つが目の前に落着し、セレスは驚きながらも咄嗟に跳んで、立ち止まることを避ける。
「やらなくてもわかるッスよ! 炎の魔法っていうのは“空気中の水蒸気の分解”、“体内物質の生成”、“摩擦熱による発火”、“引火”の四つの行程を順に、短時間でやるんスよ? そんな器用なこと、アリアムに……」
「できるわけないじゃな〜い!!」
「だからそう言ってるッス!!」
二人して走り、時に跳ね、樹の後に隠れるなどして機関銃のように降る泥の弾丸を躱す――その中で、セレスは危機感を募らせていく。
――このままじゃ埒が明かないッス……
アリアムは回避に精一杯、焦りも手伝って考えを巡らす暇もないだろう。自分にも、これをどうにかできるような打開策は――。
――いや、一つあった。
すっかり失念していたことを思い出し、セレスは今もその準備をしているであろう、もう一匹の猫に呼びかけた。
「ディアナ、まだッスか!?」
「五月蝿い、気が散りますわ!」
と、すかさず樹上から返される、苛立たしげな声。
やはり、まだ準備中だったようだ。
「もう少しですから、静かにお待ちなさい!」
「静かにって……!? アリアム!!」
そりゃ無理ッス、と言いかけて、セレスはアリアムの死角となる位置から迫る泥を捉えた。すかさずアリアムに回避を促す。
「右に!」
「くっ!!」
間一髪、セレスの指示通り右に思い切り跳ぶことで、アリアムは避けることができた。
肩から着地、受身を取りつつ起き上がり、セレスにウインクを流すことで礼をする。
「鬱陶しい猫……」
それが癇に障ったのか、シルファはそれまで気にもかけていなかった白猫を、初めて睨み付けた。
すっ、と腕を差し上げる。応じて、アリアムとセレス、二人を追っていた泥の弾丸が、一斉に白猫の方へとその向きを変えた。
「目障りだわ……」
呟くような一声で、泥の雨は滝の怒涛に変わる。
空気を削る鑢のような濁流が一直線、セレスへと向かっていく。
「うわ、うわわわ!」
フギャー、と悲鳴を上げながらもそこは猫。セレスは的の小ささと持ち前の身軽さで、降り注ぐ泥を躱し、滝壷から逃げるようにその圏外へ飛び出す。
「あまり手間をかけさせないで、おチビさん」
が、それも予想していたかのように、シルファは即座に滝の矛先、その向きを横に曲げた。
セレスは近くの樹によじ登ってこれを避け、枝から枝へ、飛び移ることで追撃も回避する――そして、叫んだ。
「アリアム、今ッス!」
「!?」
シルファは白猫を追って上げていた視線を脇に逸らした。右から迫るアリアムの姿を瞳に映す。
そう――シルファがセレスに意識を集中させている隙を突き、アリアムは横から回り込んでいたのである。
つまり、今の一連の行動は、白猫による陽動だったということだ。
本当に、鬱陶しい。
「っ――」
小さな呼吸音。
それはどちらのものだったか。
ほとんど体当たりの格好で突進したアリアム。迎え撃つシルファ。
一際大きな打撃音が響き渡る。
「甘いですよ!」
まさに紙一重。
わずかに先を取ったのは、シルファだった。
アリアムの、杖を前にかざした突進を、シルファは直前で壁を展開、防御する。
そしてそのまま、壁にぶつかった少女を泥で包み、捕らえようとして、
「それはこっちの台詞です!」
少女の真の狙いがもう一手先にあることを悟る。
「な――!?」
アリアムが壁に打ちつけた杖を支点にくるりと反転、壁と身体との位置を入れ替えるように、内側へと滑り込んでくる。
――この型は……
まさに、“相手の攻撃を受け流す”、護身術の動き。
アリアムは防御に展開した壁を、逆に相手の攻撃と見立て、それを捌くことで“防御を躱した”のである。
身を守る術しか知らぬが故の、身を守る術を応用した見事な体捌き。
防御を防御で流し、そして護身術の骨頂、“後の先”を取ってアリアムは攻撃を繰り出す。
「はっ――」
回転の勢いを乗せ、アリアムが杖を振りかぶる。
後は振り抜くのみ。
流れには逆らわない。
避けられても、次の動きは考えている。
否、これは避けられることが前提。
スピードはこちらが上。
距離を詰められた相手が防御に徹すれば、その分、攻撃が薄くなる。
薄くなれば、さらに距離を詰めることができる。
距離を詰めれば、さらに攻勢に回ることができる。
攻勢に転じれば、また守りに入らざるを得なくなる。
そうすれば、止められる。
スピードはこちらが上。
流れには逆らわない。
そう、後は、振り抜くのみ――。
「――ああああ!!」
一閃。
小さな泥の飛沫ごと薙ぎ払う。
それは、今までの何よりも速い、渾身の一撃。
だが、それを、
「くぅ」
シルファは無理矢理身を捻ることで、直撃を避けた。
杖は袖を掠め、袖口の白布が削り取られる。
シルファは即座に体勢を立て直し、距離を取るため、後方に跳び退る。
「まだまだ!!」
さらに追撃をかけるアリアム。
シルファが着地するよりも先に、その着地点を間合いに収める。
そしてその落下に合わせ、杖で足元を払おうとして、
「え……?」
アリアムは、不意の微笑を見た。
☆
――ガッ!
鈍い音が、低く響く。
それは、剣のぶつかる刃音であり、骨の軋む音であった。
そして、少年の喘ぐ声であり、老人の悶える声であった。
真紅の血と、臙脂の血が噴き出す。
それは、少年の鮮血であり、老人の血汁であった。
そして、白刃を黒く曇らせ、枯骨を紅く塗り潰す。
あまりにみすぼらしく、また異様なまでに生々しい、“殺し合い”の華。
鮮血と古血、風合いの違う二色の赤が、入り乱れて咲き乱れる。
老人が短剣を振り下ろした瞬間、ナタスは防御の姿勢のまま、刀ごと体当たりをかけることで迎撃した。
その、無謀とも思える行動は、老人にとっては全くの想定外だったのだろう。斬撃に向かってくるなど、愚行としか思えない。まして、当たれば致命傷となる攻撃に、だ。
が、結果としてそれは、効果的だった。
老人の虚ろな瞳に、自分の懐に入り込む少年の姿が映し出される。
「が、ふ……」
少年が喀血する。その肩には大きな穴が開き、血飛沫が散っていた。
それでも、少年は未だ立っている。剣を握っている。
おそらく、傷が心臓に達することはなかったのだろう。
ナタスが体当たりをかけようと自ら踏み込んできたことで、老人の剣が当たった場所は、当初の狙いよりわずかにずれてしまっていたのである。
しかし、少年の吐血量からして、肺を傷つけたことは確かである。それにより肺内部には血潮が溜まり、溢れ返った血液は気管を圧迫して、呼吸困難を引き起こすはずである。
これ以上の戦闘続行は不可能。
それでも、少年は未だ立っている。剣を握っている。
いや、それどころか、
「フ……」
ナタスは紅に染まる口元を歪め、嗤った。
「オ!?」
老人は密着状態からの斬撃、その初動を感じ取り、咄嗟に飛び下がろうとする。
だが、しかし――
本当に、それで良いのか。
後退するということは、ようやく詰めた間合いを――自分の距離を放棄することである。
自分が手に入れたこの間合いは、疑いようのない、“必勝の機”と等価のもの。今、この機を逃せば、“次”を得られることは、もうないかもしれない。
しかして、今まさに敵の攻撃が始まろうとしている――否、始まっている。
それを受けても、果たして自分には敵を仕留めるに足るだけの力が残るのだろうか。自分がこれを“必勝の機”としたように、少年もまたそうとしていたならば――。
「はあっ!」
ナタスは迷いも憂いも躊躇も一切なく、刃を滑らせるように一斬、斜めに引き抜く――。
「ガァッ!」
老人は機を逃すとしても、この攻撃は避けるべきと判断し、大きく後方に飛び退く――。
しかし、その一瞬の差が仇となった。
「ゴガアアア!!!!」
老人の身体が、刀の軌跡そのままに斬り裂かれた。一文字に裂かれた胸から、粘度の増した血液が流れ落ちる。
それでも、後方に下がったのは正しい判断だった。胸を大きく斜めに斬られはしたものの、身体を“両断”までされることはなかったのである。
ただし、左腕は犠牲となった。
老人の肩から先は、もはや腕が付いていたのかすらもわからない。
ただ、汚れで黒ずんだ血液が、だらりと下げた腕のように、どろどろと流れ出していた。
「オ、オオオ…… オオオオオ!!」
老人が慟哭する。
腕を失った痛みに叫び、怒りを示す。
その全てを破壊せんとするような敵意が、周囲に満ちていく。
しかし、ナタスはその中で、
「やれやれ……」
呆れたように余裕の笑みを浮かべ、平然と立っていた。
両肩から吹き上げていた出血も、口から吐き出していた鮮血も、もはや止まっている――どころか、傷は完全に癒えていた。
「また服を汚してしまった…… いくら傷がすぐに癒えるとはいえ、こうも簡単にお気に入りを駄目にしてしまうのは、やはり気分がよくないな」
そう、これが彼の身体に常時作用している魔法――時間回帰による“不老不死”である。
常に一定の周期で、身体に流れる時間を“ある特定の時間域”にまで回帰させる。故に歳を取ることはもちろん、傷を負った事実さえも、“起こらなかった”ことにできるのである。
「全く、やってくれたものだ。死にはしないといっても、癒えるまでの間、呼吸ができなければ俺だって苦しいんだぞ?」
ナタスは老人の敵意を軽くいなしながら、飄々と言った。こきこきと首を鳴らして、体の調子を確かめる。
「オオオ!!」
そんな彼の姿を、老人は挑発と捉えたのか。
さらなる激しい叫びと共に、腕を失ったことなど――胸の傷の痛みなど関係ないとでもいうかのように、体中を血に濡らしたまま、強く踏み出す。
「やれやれ……」
やはり、ナタスは平然と溜め息を付いてみせた。
しかし今度は、余裕故にではない。
傷を負ってなお、全く意に介さないかのように攻撃をかけてくるその姿を、皮肉に感じてしまったがためだった。
「どんな手傷を負わせても向かってくる…… こんなに厄介なことだとは思わなかったな」
死に瀕するような重症だろうと、活動に支障をきたさない。
それがかくも醜いものだとは、思ってもみなかった。自分を卑下せずにはいられない。
「ああ、本当に……」
ナタスが、呟く。
「早く終わりにしたいものだな……」
手にした剣は、闘気に応じるように、淡く、冷たく、一層の輝きを見せた。
☆
盛り上がる泥の大地。
シルファの着地先は、彼女たちが最初に攻防を繰り広げた場所。
もっとも多く、泥が溜まっている場所。
――く!
不用意だったと悔やむ間も四半秒。
アリアムは、せめてとばかりにさらに一歩、踏み込む。
そしてシルファの着地を払う、その瞬間、
「ええ、まだまだ、ですね……」
シルファの足元の泥が急激に隆起、着地点が“上にずれる”。
同時にアリアムの足元も、鋭い棘のように突出した。
それを受け止めようと、杖をかざしたアリアムに対し、
「!?」
棘は突き刺さる瞬間、五指に分かれた。
逃げ場が失われる。受けることもできない。
ならばとアリアムは、その棘に刺さらぬよう咄嗟に身体を反らす。
しかし、代わりに五指の付け根、鋭角を失った鈍器に身を晒してしまう。
「く、あ……」
浮遊感と嘔吐感。
全身に電流が走ったかのように身体が痺れる。息は詰まり、呼吸ができない。
そのまま宙に押し上げられたアリアムはどうすることもできず、地面に墜落した。
「アリアムーー!!」
駆け寄る白猫を尻目に、シルファはさらなる追撃をかける。
「少しばかり驚かされましたが…… まだまだ甘いですよ、アリアムさん。その程度で私を止めようなどと、よく言えたものです!」
振り上げられる腕。
打ち下ろされる泥。
雪崩れ込む滝の雨。
嵐に晒される身体。
「うああああ!!」
全身を引き裂く、無数の弾丸。
その怒涛の中に身を置いたアリアムは、躱すこともできなかった。
――あ…… ま、ずい…… 意識が……
だが、どうすることもできない。
風に吹かれる木の葉のように、アリアムの身体が跳ねる。
今は、ただ、この嵐が止むのを待つしかない。
それまで、意識が、生命が、保っていられればいいのだが――。
不意にころりと、ポケットの中から、何かが転がり出た。
「アリアムーー!!」
白猫の叫びに、少女の応えは返らない。
やがて嵐は止み、舞い上がる土煙も晴れる。
すると、そこには汚れた人形のように横たわる、少女の姿があった。
「アリアム! アリアム!! しっかりするッス!!」
やはり、返事はない。
それに“満足”したように、シルファが泥の盛り上がった丘を下り始めた。
「クス…… 終わりですね」
階段のように整形された泥の丘は、まるでシルファの踏みしめている部分だけは石の如き強度を持っているかのように、“面”の堅さを見せていた。
対してその周囲は、まさに泥。流動する粘度の高い液体にしか見えない。
だが、その流動する泥の上でも、彼女はあたかも大地のようにしっかりと踏みしめて、ゆっくりと歩みを寄せてくる。
「ダイラタンシー……」
そう呟いたセレスに、シルファは意外そうな瞳を向けた。
歩みを止めることなく、静かに語る。
「物知りなのね、白猫さん。私もその名を知ったのは最近でしたのに……
そう、“ダイラタンシー”――水と微細粒子の混合物に、外部から力をかけると粒子間隔が広がり、その隙間に水が入り込んでいくため、擬似的に表面が乾いたようになる、粘性異常」
「普段は流れる液体、けれど力を加えることで固体の硬度を発揮する…… 攻防に使えるわけッスね」
「液体でもあり固体でもあるこの泥は、一見矛盾していそうでありながら、しかし純然たる自然界の物質。如何に足掻こうと、摂理には逆らえませんよ……」
泥の台地を下りきると、シルファは改めて眺めるようにセレスたちを見た。
アリアムはまだ、立ち上がっていない。
立ち上がる気配もない。
それを確認すると、シルファは抑揚のついた声で言った。
「さあ、おどきなさい、猫さん。邪魔をしないのなら、貴方は見逃して差し上げます。残念ですが、さすがにもう、立ち上がるのは無理でしょう。彼女はよくやりましたが、これまでです」
そして、笑う。
ほとんど感情を示さない彼女は、その一端、“愉悦”を笑みに浮かべ、楽しそうに呟いた。
「でも大丈夫。アリアムさんは私が生き返らせてあげる。だから、その身体を私に――」
そうして、ゆっくりと手を伸ばしてきたシルファに、
「――頂戴!」
「それは、嫌です」
こちらも、どこか暢気な風に、声を返した。
――ドッ、という鈍い音。
アリアムは倒れたまま、シルファに杖を突き出していた。
泥による防御が間に合わなかったシルファの左腕に、穂先がめり込む。
「ぐ……」
咄嗟に距離を取るシルファ。
まさか、まだ動けたとは――。
「……決め手とはならなかったのですか。不覚でした」
シルファは、どころか立ち上がってさえ見せたアリアムを眺め、呟いた。
彼女の腰元、左側がわずかに赤くなっている。
しかし、血ではない。
「そう、“隠れ身”を篭めた魔法石を…… 見事です」
シルファは素直な賛辞を述べる。
魔法石――魔力または魔法を篭めることで、特別な行程を踏まずとも時間を置いて行使が可能になり、また魔法の使えない者にも扱えるようになる魔法具。
それは教会に来る際に、ナタスから受け取っていた、“隠れ身”を篭めた魔法石の光だった。
“隠れ身”とは、“そこに人はいない”という無意識的な思い込みを利用して身を隠す魔法である。
それを応用し、アリアムは“倒れて動けない”という事象を、シルファに“思い込ませ”て、シルファの油断を誘ったのだ。
――先程の、私の泥を躱した技術といい、この人は応用が劇的なまでに巧い……
ですが、とシルファは思う。
赤い光は消えた。すなわち、魔法石がその力を失った、ということ。隠れ身はもう使えまい。
加えて、あの重傷だ。
致命傷ではないようだが、いずれにしろ、これ以上の闘いは不可能――
と思考を巡らし、しかし、シルファはその考えが浅慮だったことを思い知る。
――な、馬鹿な!?
アリアムの胸に添えられた掌が淡い白色の光を放っていた。
――傷が、癒えていく……? まさか、治癒魔法!
シルファは心の内で驚愕する。
魔法など、全くできないと思っていた。
だが、使えないのではなく、使わなかっただけだったのだ。
当然である。
無傷ならば使う意味はないし、掠り傷ごときにも必要はない。
こういった、重傷に使ってこそ効果がある。
――く、これは厄介ですね……
シルファは、アリアムたちが感じていたのと同じ想いを抱いた。
これでは傷を負わせても、また回復される可能性がある。いくら攻撃を加えても堪えないというのは、攻撃する側にとっては脅威という他ない。
ならば回復させる間もなく、攻撃を加えれば良い、のだが、
――この腕では、難しい……
シルファの左腕は、先の攻撃の際に負傷していた。明らかに動きが悪い。
だが幸いにも、そのことは気取られていないようだ。
「そんな魔法を持っていたなんて、知りませんでした。まぁいいですけどね。蘇生の魔法じゃなし、回復する前に仕留めれば良いだけのこと」
そう言い、シルファは右腕を上げる。
そして、アリアムの傷が完治する前に、再び攻撃を加えんと泥を動かす。
と、そのとき、突如、視界が揺らいだ。
「準備ができましてよ! お待たせいたしましたわね!」
頭上から聞こえる、黒猫の声。
一体、どうしたというのか。
あろうことか夜の森に蝶が飛び、小鳥が囀り、花の香りが届き、暖かい風がそよぐ。
――これは……?
「さあ、セレス!」
「おっけー、ディアナ!」
二匹の猫が、共に叫んだ。
「「反撃開始!!」」
いかがでしたでしょうか?
今回、シルファの魔法として登場した『ダイラタンシー』現象。某科学の先生のおかげで、すっかり有名になっちゃいましたね…… もう少し早く登場させればよかったかな……?
水と片栗粉でできるので、ぜひ試してみてください。楽しいですよw