ティファニーで朝食を食べないで(3)ムーンリバー
映画『ニューヨークの恋人』において、メグ・ライアン演じるケイトが、向かいのマンションから流れてくる「ムーン・リバー」に耳を澄ませるシーンは、都会の喧騒の中にふと現れるエアポケットのような美しさがあります。
毎日決まった時間に響くその旋律は、現代を忙しなく生きる彼女にとって、忘れかけていたロマンティシズムを呼び覚ます合図だったのかもしれません。らせん階段を降りながら、無意識に口ずさむケイトの姿は、まさに『ティファニーで朝食を』で窓辺に座りギターを弾いていたオードリー・ヘプバーンの面影と重なります。時代も場所も超えて、同じ旋律が孤独な魂を癒やすという演出は、映画史に残る粋なオマージュと言えるでしょう。
この曲を語る上で欠かせないのが、歌詞に登場する「huckleberry friend」という言葉です。ハックルベリーは北米に自生する素朴な木の実で、かつて子供たちが泥だらけになりながら摘んだ原風景を象徴しています。
英語圏でこのフレーズがこれほどまでに愛されているのは、単なる「幼なじみ」という言葉以上に、損得勘定のない無垢な時代を共有した特別な存在、あるいは自分自身の心の奥底にある「純粋な半身」を指しているからではないでしょうか。日本語の「竹馬の友」という響きにも通じますが、より詩的で、どこかノスタルジックな孤独を孕んだ表現です。
ムーン・リバー 詞の世界
ムーン・リバー、ゆったりと流れる広い河。
私はいつか、あなたを堂々と渡ってみせる。
あなたは時として私を勇気づけ、時にはその深さで心をかき乱す。
けれど、あなたがどこへ向かおうとも、私はその後を追っていく。
私たちは二人とも、世界をさすらう放浪者のようなもの。
見たい景色は果てしなく、虹の向こうにあるという宝物をずっと追い求めている。
あの河が大きく曲がったその先で、あなたは待っていてくれるのだろうか。
たった一人の、大切な幼なじみ。
ムーン・リバーと、私。
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英語の歌を日本語に訳してみました。
ムーン・リバーに寄せて:日本語詞
ムーン・リバー いつの日か
渡っているわ きっと
夢はかなう 負けないわ
私はゆく その日まで
ふたりは 彷徨うの
銀河をこえ ゆく
約束しましょう 虹の果で
待っていてね
ムーン・リバー アンド ミー




