めぐり逢い(7)~満月はだめ
デボラの後を追い、「待って、困ってるんだ」
ケーリーのナンパが始まる。
「遊びが過ぎるのよ。自業自得」
「相談を」
「私はだめ、聞くより話したいクチで」
「正直な顔だ」
鏡で顔を見て、「この顔が?」と、デボラがおどける。
「信用できるね」
「まあね」
「頼む」
「船長も正直そうよ 彼に話せば?」
「僕の船室へ」
彼の考えを読み取ったデボラは、
「私の船室なら」
と、言ってケーリーの口説きをさらりとかわす。
船室に入るとデボラは言う。
「私の母の教えなの、満月の夜は、男性の部屋に入るなって」
「それは、感心だ」
ケーリーは長い船旅、退屈なので、二人で楽しまないかと提案する。
デボラは指差す。
指差した方向に、男性の写真立てがある。
ケーリーは写真を見て、「お兄さん?」
「違うわ、私の婚約者、私は一途な女よ」
かたくなに拒否するデボラに、
もて余してシガレットケースからタバコを取り出し吸おうするが
マッチがない。
タバコをくわえて 「火がない」と言う。
「ガブリエラの、お熱い文句で、火をつけたら?」
そして
長い船旅の間に、ケーリーとデボラは、一日一日深く結ばれていく。
どんなに深い愛で結ばれていたとしても
一週間以上の長い船旅だ。
女性を決して一人にしてはならない。
製作者エヴァンズは言う。
「コッドファーザー」の製作で奮闘している間
妻アリ・マックグローは「ゲッタウェイ」でスティーヴ・マックィーンと共演。
撮影の間、彼女に一度も会いに行かなかった。
アリはスティーヴ・マックィーンと恋に落ち、結婚してしまう。
「女心が読めるなどという男は何もわかっちゃいない」
一度でも撮影先にゆくべきだったとロバート・エヴァンズは後悔する。