表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

642/655

カオスの母星(6) 九州のへそ

海外からのメールを読み終えたとき、私の目から自然と涙がこぼれた。

自分の存在が、ようやく正しい数式で解かれたような、深い安堵だった。


数週間後、私は福岡県大牟田市の地に立っていた。

九州の南北を繋ぐ結節点。かつて炭鉱の熱気で日本中を照らし、今もなお、不思議な光――UFOの目撃談が絶えない、磁場の強い「九州のへそ」だ。


「あき先生、お待ちしていました。よくこの三池大学へ来てくださいました」


迎えてくれたのは、街の歴史を背負った教員たちだった。

ジムの受付でもなく、ビルの地下でもない。教壇という、かつて私が最も愛し、そして最も恐れた場所がそこにあった。


「私のような、ブランクがあって、おまけにこんな派手な格好をした人間を、本当に受け入れてくれるんですか?」


私の問いに、年配の教授は、有明海の潮風に目を細めながら穏やかに笑った。


「この街はね、かつて地の底からエネルギーを掘り出し、この国の夜を明るくしてきたんです。今度は、あなたの知性で学生たちの心に灯をともしてほしい。派手な金髪? むしろ大歓迎ですよ。ここらじゃ夜空に飛ぶ未確認飛行物体の方が、よっぽど派手な光を放っていますから」


私は深呼吸をした。

肺を満たすのは、湿り気を帯びた潮の香りと、力強い大地の匂い。


私の新しい仕事は、学生たちに宇宙を教えること。

そして、かつての私のように、自分の価値を見失いかけている「迷子の子星たち」に、その輝きを思い出させることだ。


研究室の窓から、夕日に染まる有明海の地平線が見える。

私はスマホを掲げ、大牟田の空を背景に、これまでで一番晴れやかなピースを作った。


「準備はいい? 宇宙は、いつだってあなたの味方だよ」


私の人生という銀河に、新しい太陽が昇り始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ