万博黒字〜観客のアンケートを毎日取り、即座に改善
万博黒字〜観客のアンケートを毎日取り、即座に改善
AIという「冷たいデータ」を人間の「熱量」で動かした泥臭い勝利の記録ですね。
### 24時間のPDCA:データが熱を帯びる瞬間
万博を黒字へと押し上げたのは、理論上の戦略ではなく、24時間単位で繰り返された凄まじい密度の改善サイクルでした。導入されたVOCシステムは、単に不満を集計する装置ではありません。それは会場内に散らばる何万もの「ため息」や「困りごと」を、リアルタイムで運営本部のモニターに映し出す「心の地震速報」のような役割を果たしていました。松山や水谷ら10人の精鋭チームが目指したのは、AIによる効率化の先にある、徹底した現場主義の体現です。
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### AIは「予兆」を捉え、人間は「体温」を測る
1日1万件。人間の目では到底処理しきれない膨大なテキストの海から、AIは「トイレ」「暑い」「迷った」といったキーワードの急上昇を即座に検知します。しかし、村林泰之や山田幸夫らがこだわったのは、AIが弾き出したグラフの裏側にある「来場者の表情」を想像することでした。データが「案内不足」を示せば、彼らは会議室を飛び出し、実際にベビーカーを押したり、慣れない土地から来た観光客の視線で会場を歩き回りました。
> AIは示唆を与える存在、実行は現場が全て。
この言葉には、テクノロジーに溺れず、あくまで道具として使いこなすプロフェッショナルの矜持が宿っています。
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### 三角コーンから始まった、600台のベンチ移動
象徴的なのは、案内板の増設やベンチの配置変更といった、一見すると地味でアナログな対応です。AIが「移動のストレス」を可視化した際、彼らが最初にとった行動は、立派な看板を発注することではなく、手近にある三角コーンを置いて即座に導線を作ることでした。この「分単位の修正」が積み重なり、最終的に70か所の案内増設へと繋がりました。
さらに、象徴的な大屋根「リング」を巡るエピソードは、データと実感が融合した白眉といえます。上層と下層で生じる7度の気温差。これはセンサーが示した数値以上に、現場を歩き、噴き出す汗を感じた職員たちの執念で見つけた事実でした。日差しの角度に合わせて毎日600台のベンチを動かすという、気の遠くなるような作業。この「AIにはできない献身」こそが、来場者に「大切にされている」という実感を与え、リピーターを生み、黒字化への決定打となったのです。




