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フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


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あなたは宇宙の一部で、星の死骸から生まれた『星の子』なんだから カオスの母星その3

あなたは宇宙の一部で、星の死骸から生まれた『星の子』なんだから


バケツの濁った水に、自分の顔が映っている。

「……何やってんだろ、私」

ふと漏れた本音を、地下の換気扇が冷たく吸い込んでいく。


掃除の休憩時間、薄暗い階段の隅に座り、私はスマホを取り出した。画面の中で流れてくるのは、キラキラした料理の写真や、誰かの成功報告。かつての仲間たちが、新しい論文を発表したというニュース。


(……まぶしすぎる。私の今の座標は、光さえ脱出できないブラックホールの底なのに)


その時、目に止まったのは、ある若者が投稿していた短い動画だった。

「宇宙って何のためにあるんですか? 勉強する意味、分かんないっす。自分なんていてもいなくても変わんないし」

投げやりなその言葉に、私の指が勝手に動いた。


(何のためにあるかって? そんなの、決まってるじゃない)


私は、掃除用のゴム手袋を脱ぎ捨てた。鏡を見る。金髪はボサボサ、ネイルも少し欠けている。でも、私の目は死んでいない。


私はスマホのカメラを自分に向け、録画ボタンを押した。


「あのね、宇宙に意味なんて最初からないの。でもね、だからこそ、あなたが勝手に意味を決めていいんだよ。あなたの体を作っている炭素も酸素も、かつて遠い宇宙で星が爆発したときに散らばった欠片。あなたは宇宙の一部で、星の死骸から生まれた『星の子』なんだから。誰かに勝手にあなたの価値を測らせちゃダメ。……ピース!」


アップロード。

一分にも満たない、衝動的な独り言。


「……何やってんだろ、ほんと」


我に返って顔を赤くし、私は再び掃除道具を手に取った。世界中の誰も、こんなボロボロの清掃員が語る宇宙の話なんて聞きやしない。そう思っていた。


けれど、その夜。

私のスマホは、かつて観測した超新星のように、激しく通知の光を放ち始めた。


「救われました」「涙が止まらない」「この金髪の人、何者?」


止まらない通知の音。

暗闇の底で、小さな、でも確かな爆発が起きていた。

私の指先から、新しい宇宙が始まろうとしていた。

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