同じ人と4回も結婚?
同じ人と4回も結婚? 銀幕ノート
『あなたに恋のリフレイン』という映画は、傑作と呼ぶには少し歪かもしれません。しかし、観終えたあとに奇妙な余韻が残る、中毒性のある一作です。
今回は、この作品が描く「ありえないほど情熱的なループ」の魅力を紐解いてみましょう。
現実が映画を追い越した、狂おしい愛の記録
本作の最大の見どころは、やはり主演の二人、アレック・ボールドウィンとキム・ベイシンガーの危うい熱量にあります。
『恋するベーカリー』でどこか憎めない元夫を演じたアレックが、本作でも執拗に元妻に執着する男を演じていますが、驚くべきは二人がこの共演を機に現実でも結婚したという事実です。劇中で4回も結婚と離婚を繰り返す彼らの姿は、モデルとなったエリザベス・テイラーの私生活を彷彿とさせますが、現実の二人の熱愛がそのままスクリーンに焼き付けられているからこそ、この荒唐無稽な物語に不思議な生々しさが宿っています。
マフィアの掟さえ無効化する、脚本の力技
物語の舞台は1940年代のロス。大金持ちのプレイボーイが、あろうことかマフィアの情婦に手を出してしまうところから騒動は始まります。
本来ならマフィアの掟で消されてもおかしくないシチュエーションですが、そこを力技で納得させてしまうのが、喜劇作家の大家ニール・サイモンによる脚本の妙です。皮肉たっぷりのナレーションで主人公の生い立ちを語らせる手法は、まさにサイモン節全開。荒唐無稽な展開を、軽妙なコメディのガワで包み込み、観客を強引に「ありえない愛の迷宮」へと誘い込みます。
妥協か、爆発か。「4回の結婚記念日」が意味するもの
些細な口論で別れては、また吸い寄せられるように再会する。4回も結婚記念日がある人生なんて、普通なら御免被りたいものでしょう。
しかし、この映画を観ていると、ふと考えさせられます。
だらだらと妥協し合う、温度の低い恋愛を続けるのが幸せなのか。あるいは、一度さっと別れて相手への想いを極限まで蓄積させ、再会の瞬間にその感情を爆発させる恋愛が幸せなのか。彼らにとっての離婚とは、次に恋を爆発させるための「助走」に過ぎないのかもしれません。
舞台の上で、指輪は語る
圧巻なのは、4度目の求婚シーンです。
彼女が歌う店に通い詰め、無言で指輪を差し出す男。舞台を降りた彼女は、彼を無視するように他の客の間をすり抜けます。しかし、再びステージに戻った瞬間、男は気づくのです。テーブルにあったはずの指輪が消え、彼女の指で輝いていることに。
言葉を介さず、ただ指輪の行方だけで「私も待っていた」と伝える。この粋な演出こそが、本作が単なるバカ騒ぎではない、深い情愛の物語であることを証明しています。
椅子という夢の果てに
かつて『フェノミノン』や『Juno/ジュノ』で語られた「椅子」というメタファーを借りるなら、この二人はお互いの椅子を壊しては買い直し、壊しては買い直しているようなものです。
一脚の椅子に静かに座り続けることだけが、愛の形ではない。何度も立ち上がり、激しくぶつかり合い、それでも同じ場所に椅子を並べ直してしまう。そんな不器用で情熱的な「椅子の座り方」があってもいいのだと、この映画は教えてくれます。




