表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

607/655

カオスの中の「母星」

「母星」と言う女性の短編 あと数話で完結予定

カオスの中の「母星」

「はい、お疲れ様でーす。入館証、ピッとお願いいしまーす」


スポーツジムの受付カウンター。私の指先には、星屑を散りばめたような深いネイビーのネイルが光っている。金髪をゆったりとまとめ、おだやかな笑みを浮かべているけれど、私の頭の中にはいつも、数千億の星々がひしめく銀河系が広がっている。


目の前でプロテインを飲み干している会員さんは知らないだろう。私の名前は、あき。かつてアメリカの大学院で、宇宙の誕生を数式で追いかけていた元天文物理学者だ。


「ちょっと受付さん、ここ、掃除が行き届いてないんじゃない?」


お決まりのクレーム。でも、今の私にはそれが小さなチリが舞っているようにしか見えない。チリが集まって、やがて星になる。そう思うと、なんだか愛おしくさえある。私の論理的思考が、静かに、そして軽快に動き出す。


(お客様、宇宙の95%は正体不明の暗黒物質と暗黒エネルギーでできているんです。この床のわずかなホコリなんて、宇宙の神秘に比べたら、かわいいデコレーションみたいなものだと思いません?)


もちろん、そんなことは言わない。代わりに、私は「母星」のような包容力を持ってこう微笑む。


「失礼いたしました。すぐにピカピカにしますね!でもお客様、今日のそのウェア、火星の表面みたいに情熱的な赤でとってもお似合いですよ。ピース!」


お客様は少し照れたように去っていく。 私はカウンターの下で、使い古した計算ノートをそっと開いた。


研究の第一線を退き、子供を育て、生活のために泥臭い仕事もたくさんしてきた。かつての仲間たちは今頃、最新の望遠鏡で遠くの銀河を見つめているだろう。


でも、私は後悔していない。 どこにいても、どんな仕事をしていても、私は私の人生という系の中心にある「母星」だ。 重力に引かれるように、誰かが私の言葉を求めて集まってくるのを、私はずっと知っていた。

「最後までお読みいただきありがとうございます。 普段は舞台プロデューサーとして劇の原案も手掛けております。 舞台化・映像化された情報は、こちらの特設サイトにまとめています。 [URL:http://tengyu2.web.fc2.com/0produce_butai.html]

興味のある方はぜひ覗いてみてください」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ