ウディ・アレンの映画監督としてのキャリアは、意外にも日本映画の再構築から始まりました。
ウディ・アレンの映画監督としてのキャリアは、意外にも日本映画の再構築から始まりました。
1966年、当時はまだ若きコメディアンだった彼は、東宝が制作した国際秘密警察シリーズの第3作である火薬の樽と、第4作の鍵の鍵という2つの作品を素材として選びました。主演の三橋達也氏が演じるクールでハードボイルドなスパイアクションの世界を、彼は全く別のナンセンスなコメディへと変貌させたのです。
アレンが行ったのは、単なる翻訳や吹き替えではありませんでした。元の重厚なサスペンス映像をずたずたに切り貼りして再編集し、物語の目的をスパイ活動から究極の卵サラダのレシピを巡る争奪戦へと勝手に書き換えてしまいました。さらに、アレン自身が登場するトークパートを撮り下ろして挿入するという徹底ぶりです。
こうして誕生したのが、彼の監督デビュー作であるサヨナラ・タイガー(原題:What's Up, Tiger Lily?)です。この作品はアメリカでカルト的な人気を博し、現在でも英語版であれば視聴することが可能です。
しかし、オリジナルの日本映画を愛するファンや権利関係者からすれば、自慢のアクション大作を喜劇の素材にされたという複雑な思いがあったのでしょう。結果として、このアレン流パロディ版の公式な日本語版は、オリジナルへの敬意や権利上の配慮からか、日本では観ることができない幻の作品となっています。日本の名優たちが全く異なるおかしな台詞を当てられている姿は、まさに映画史における奇妙な事件と言えるかもしれません。




