キャサリン・ヘプバーン「正しいか間違っているかなんてどうでもいい。重要なのは逃げ出さないこと」
「興行界の毒」と呼ばれた女王の、最も美しき大逆転
「史上最高の女優」という称号からは想像もつかないが、キャサリン・ヘプバーンには、キャリアが完全に死にかけた暗黒の時代があった。1930年代後半、彼女はあろうことか「ボックスオフィス・ポイズン(興行界の毒)」という不名誉なレッテルを貼られたのだ。
知性的で気が強く、媚びを売らない彼女のスタイルは、当時の大衆には「高慢」だと映った。出演作は次々と空振りし、映画会社からも見放される。普通の女優なら、ここで時代に合わせた「愛らしい女性」を演じて妥協するか、表舞台から消えていっただろう。しかし、彼女は「完全な男」のような不屈の精神を持っていた。
彼女が取った行動は、まさに前代未聞だった。
ハリウッドを一度去り、戦いの場をニューヨークの舞台に移したのだ。そこで出会ったのが、彼女の個性をあて書きしたような戯曲『フィラデルフィア物語』だった。彼女はこの舞台を大成功させると、その映画化権を自ら買い取った。キャスティングの主導権を握り、あえて「欠点のある、人間味あふれる女性」を演じることで、再び観客の心を掴み取ったのである。
この「自らの力で運命を買い戻す」という強烈な意志こそが、キャサリンの本質だ。彼女にとって挫折とは、立ち止まる理由ではなく、高く跳ぶための助走に過ぎなかった。
後に『アビエイター』でケイト・ブランシェットが演じたあの凛とした姿も、あるいは『旅情』で見せた大人の女の孤独も、この「毒」と呼ばれたどん底の経験があったからこそ、深い説得力を持って私たちに迫ってくる。
「正しいか間違っているかなんてどうでもいい。重要なのは逃げ出さないこと」
彼女が遺したその言葉は、挫折の淵で自分を信じ抜いた者だけが放てる、真実の輝きに満ちている。




