愛ではないのに、 男を欲しがる気持ち、 恋しがる気持ち。
『I MISS YOUの行方』
愛ではない。そう断言できるほどには、私はもう子供ではないし、自分に嘘をつくことにも飽きていた。
心の奥底に沈殿しているのは、もっと生々しい、名付けようのない熱だ。彼という存在を丸ごと愛で包み込みたいわけじゃない。彼の未来を背負いたいわけでも、私の全存在を捧げたいわけでもない。ただ、彼を欲している。その事実だけが、皮膚の裏側をチリチリと焼く。
これは、アイ・ラブ・ユーなんていう、綺麗に包装された言葉では運べない感情だ。もっと切実で、もっと身勝手な――そう、アイ・ミス・ユーなのだ。
視線の先で、彼が銀紙を剥き、一粒のチョコレートを口に放り込む。甘い香りが、わずかにこちらまで漂ってきた気がした。その瞬間、たまらなく「同じもの」を身体に入れたいという衝動に駆られる。
彼が今、舌の上で感じている苦味。喉を通っていく熱。脳を痺れさせる甘美な刺激。それを、私も一分一秒の狂いもなく共有したい。
「一つ、もらえる?」
そう口にする時の喉の渇きを、彼は知らないだろう。差し出された指先が触れ、彼が食べていたのと同じ箱から取り出した一粒を口に含む。彼の体温に近い場所にあったチョコが、私の体内で溶けていく。
同じものを食べ、同じ味を感じている。たったそれだけのことが、胸が締め付けられるほどに切なく、そして残酷なほどに嬉しい。
けれど、この高揚感を恋と呼ぶのは、あまりに感傷的すぎる。これはもっと原始的で、飢えた獣が獲物を求めるような欲望だ。
彼が欠けている。
彼というピースが、私の世界のパズルの真ん中にぽっかりと穴を開けている。その穴を、彼の食べているチョコで、彼の吸っている空気で、彼の触れる温度で埋め尽くしたい。
満たされないから欲しがるのではない。触れていても、共有していても、なお足りない。この果てしない、アイ・ミス・ユーの連鎖こそが、私にとっての、彼を求める唯一の形なのだ。




