冷静と情熱のあいだ~(5)不一の完
## 冷静と情熱のあいだ(5)原作との違いに関する考察
原作と異なり、映画では途中で二人が再会してしまいます。
これについては、監督コメンタリーでも**「大激論になった」**と語られていたそうですね。
原作の読者が感じたであろう、クライマックスでの感動が薄れてしまうのは理解できます。
しかし、映画を深読みすると、順正の手紙を受け取った時点で、アオイは順正がドゥオーモに来ることを確信していたようにも見えます。その根拠として、彼女が(順正の友人の)チェロ奏者を手配している点が挙げられます。
★ロス行きを否定しないアオイ
愛する順正の父親から「身を引いてほしい」と頼まれたら、『椿姫』のヒロインのように、その言葉に従ってしまう女性はいるでしょう。
アオイにとって、順正とはもう結婚できない関係になっていたのかもしれません。
だからこそ、彼女が望んだのは、ただ約束の場所で「会って」過去を区切り、
果たすことだけだったのではないでしょうか。
そう考えると、ロス行きを決めたのは、ドゥオーモでの再会を果たした
**後の、「お別れの理由」**として用意したものだったと解釈できます。
★フランス恋愛映画の代表作『男と女』との類似性
ドゥオーモで会うまでは、まさに**「情熱に燃えた」**二人でしたが、
再会を果たした途端に、どこか**「冷静になってしまった」**。
このクールダウンした結末こそ、私が本作で気に入った点の一つです。
そして、このエンディングの構図は、フランス恋愛映画の金字塔『男と女』と共通していますね。
『男と女』では、駅のプラットフォームで男が女を追いかけ、抱き合って終わります。
『冷静と情熱のあいだ』も、愛する女性を追いかけて駅で再会するあの有名なシーンは、
『男と女』のエンディングと、非常に類似していると言えます。




