冷静と情熱のあいだ~(2)女性は無口の方が好きだ
冷静と情熱のあいだ~(2)女性は無口の方が好きだ
酷評は、前述の北野武監督の恋愛映画『Dolls』と同じですね。
恋愛映画が嫌いな方は少なくありません。
これまでの経験からすると、女性を含め日本人の九割は恋愛映画を好まないようです。
仕方がないことですが、恋愛映画について語っている自分はマイナーであり、永遠に恋愛映画が好きになれない人たちのほうがメジャーなのだと感じます。
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★原作について
映画が良かったので原作を読んでみました。まさか原作が二冊あるとは知りませんでした。
辻仁成氏の原作を読んでみると、映画とはかなり異質な印象を受けました。正直に言えば、原作にはあまり惹かれませんでした。
原作者は二人、辻仁成と江國香織。
ひとつの恋愛を女性の視点と男性の視点から描いており、女性側は『Rosso』(赤)、男性側は『Blu』(青)として二冊刊行されています。
★女性は無口の方がいい
以下は映画だけからの、私の勝手な想像としてお読みください。
本作は風変わりで、稀な男女の恋愛を描いていると思います。
物語は国際恋愛です。
女性は中国人で、たまたま父が日本人でした。父の死をきっかけに中国では居づらくなり、日本に居場所を求めて留学します。日本語は片言しか話せません。
男性は、有名な画家を祖父に持つ裕福な家庭で育ち、絵の修行をしています。働く必要がなく、親の愛情もあまり知らずに育ちました。仕事をする必要がないため、人と妥協することを学んでいないようです。
二人に共通しているのは頑固さ。親の愛情不足のためか愛情表現が不完全で、常に自分の居場所を探しています。お互いが惹かれ合ったのは、居場所を探していたからであり、自分ばかりを主張して口うるさい芽実とは違い、無口な女性だったからなのでしょう。やはり女性は無口の方がいい。
しかし恋愛は長く続かず、必ずこじれます。
一度こじれると、国際恋愛ほど修復が難しいものはありません。気持ちが伝わりにくいからです。女性は日本語で思いをうまく表現できず、誤解が深まってしまいます。
こじれた後の女性の思いは、恋愛映画でよくある感動のパターンで描かれています。
――「椿姫」のパターン。
私が身を引いた方が、あなたは幸福になれる。ふさわしい女性を探してほしい。
――「めぐり逢い」のパターン。
何も言わず説明もしない。ただ思っていれば、相手に伝わるはずだから。
女はひたすら無口である。
無口とは、頑固であるということなのです。




