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フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


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映画「ある愛の詩」のヒットはプロデューサーの力による

『ラブ・ストーリー』という映画のヒットには、偶然や運だけでは語れない、いくつもの必然が重なっている。主演のアリ・マッグローとライアン・オニール、そしてプロデューサーのロバート・エヴァンス。それぞれの存在が、この映画を時代を越える作品へと押し上げた。


まず、アリ・マッグローの存在感は圧倒的だった。上品で、知的で、そしてどこか儚い。彼女が演じたジェニーという役は、脚本が想定していた以上の深みを持ち、観る者に強く焼きついた。そして、ライアン・オニールが演じたオリヴァーには、若さゆえの脆さと愛情の真っ直ぐさがあり、それがジェニーとの対比として完璧だった。だが、これは演技力の問題だけではない。ふたりは実際に現場で惹かれ合い、恋に落ちた。その感情がスクリーンににじみ出ていたからこそ、観客は彼らを“演じている”とは思わず、ただそこにある愛を信じることができた。


そして、名台詞「愛とは決して後悔しないこと(Love means never having to say you're sorry)」――この言葉は脚本家エリック・シーガルの手によるものと思われがちだが、実際には、ロバート・エヴァンスとアリ・マッグローの恋愛の中で生まれたものだった。恋愛中のある日、エヴァンスがアリに言った。「愛していれば、謝る必要なんてない」。その一言にアリは深く心を動かされ、それが映画の中でセリフとして生まれ変わった。つまり、この映画の核となる台詞は、現実の私語がフィクションへと昇華された結果だった。


加えて、音楽というもう一つの要素を忘れてはならない。テーマ曲を手がけたのは、フランスの作曲家フランシス・レイ。『男と女』の成功で知られていた彼をこの映画に招いたのは、プロデューサー・エヴァンスの慧眼だった。誰もが懐疑的だったが、エヴァンスはアラン・ドロンを仲介に立て、フランシス・レイを口説き落とした。結果として、あの旋律は映画の感情を決定づけるものとなり、物語に言葉以上の余韻を与えた。


『ラブ・ストーリー』は、演技力でも、脚本でも、音楽でも語れる。だが、真に語るべきはそれを支えた“愛の空気”だ。役者同士の愛、製作者と女優の愛、そして作品への愛。そのすべてが混じり合った瞬間に生まれたのが、あの映画だった。


ヒットとは、才能と偶然と、愛が交差したときにだけ起こる奇跡なのだ。


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