「試写会の反響」ゴッドファーザー
「試写会の反響」ゴッドファーザー
1972年春。スタジオの試写室に、重役や批評家たちが集まっていた。スクリーンに『ゴッドファーザー』の文字が浮かび上がると、会場には一瞬の緊張が走った。
上映が始まると、観客は次第に口を閉ざした。銃声や取引の場面ではなく、家族が食卓を囲むシーンで、誰もが画面に引き込まれていった。ヴィトー・コルレオーネが孫にオレンジを差し出す仕草。マイケルが父の背負った影を、静かに自分の肩へと受け継いでいく姿。その細やかな表現が、観客の胸を締めつけていった。
やがてエンドロールが流れたとき、試写室は静まり返っていた。しばらく誰も立ち上がらなかった。映画が終わったことを信じられないかのように。
やっと一人の批評家が口を開いた。
「これは……ただのギャング映画じゃない。まるでギリシャ悲劇のようだ」
次いで、経営陣の一人が呟いた。
「神に選ばれた家族の物語だ。観客はこれを忘れられないだろう」
拍手が湧き上がるまで、時間はかからなかった。重苦しい沈黙は、やがて熱を帯びた称賛に変わった。
その光景を見ながら、エヴァンスは深く息を吐いた。彼が賭けてきた信念は、いま確信へと変わった。
「ほら見ろ。人は家族を見に来るんだ」
彼は小さく呟いた。スクリーンの余韻に浸る人々の顔を見ながら、すでに思っていた。――この映画はただのヒットでは終わらない。アメリカの文化を塗り替える一撃になる、と。