ロバート・エヴァンスとアリ・マッグロー
ふたりが初めて出会ったのは1968年ごろ。映画業界のパーティー、あるいはパラマウントでの面会がきっかけだったとされています。
エヴァンスはその瞬間から彼女に惹かれたと言われています。
当時、エヴァンスは一度の離婚歴があり、マッグローも最初の結婚が破綻していました。
アリ・マッグローはコロンビア大学出身で、ハーパーズ・バザー誌のアシスタントからモデルを経て、映画界に足を踏み入れました。当初は女優志望というより、アートやファッションに関心のある知的な女性でした。
その頃、ロバート・エヴァンスはすでにパラマウント・ピクチャーズの製作責任者として頭角を現しており、次々と話題作を企画していました。エヴァンスの美意識とマッグローの洗練された魅力は、初対面から強く響き合ったと伝えられています。
ふたりの出会いには諸説ありますが、決定的だったのはエヴァンスがプロデュースする映画にマッグローを推したこと、つまり『さよならコロンバス』です。
『さよならコロンバス』(1969)への抜擢
『さよならコロンバス』は、フィリップ・ロスの同名短編小説に基づく映画で、東欧系ユダヤ人の青年と上流階級の娘との恋愛を描いた、知的で皮肉に満ちた青春ドラマです。
当時のアリ・マッグローにとっては、まさに大抜擢。映画出演はこれが実質的に初めての本格的な主演であり、ロバート・エヴァンスの支援がその背景にあったことは間違いありません。
エヴァンスは、マッグローにとっての“育ての親”のような立場になっていきます。彼は彼女の才能を信じ、役を与え、育て、そしてプライベートでも惹かれていったのです。
『さよならコロンバス』は1969年に公開され、アリ・マッグローは一躍注目の的となりました。この作品で彼女はゴールデングローブ賞の新人賞を受賞し、その年の「新しい顔」としての地位を確立しました。
この時点では、まだふたりは恋人ではなく、あくまでプロデューサーと女優の関係でした。