サンズリバーサイド外伝 その3 三人よれば文殊の知恵
撮影所の片隅で、サキとケイコがひとしきり撮影の合間に休憩していた。ケイコが少し不安げに話しかけた。
「サキさん、ちょっと質問していいですか?」
サキはケイコに目を向け、にっこりと微笑んだ。
「もちろん。何?」
「映画『カサブランカ』についてなんですが、あれって確か、複数の脚本家が関わったって聞きました。どうしてそんなに多かったんですか?」
サキは深く息を吸い、ゆっくりと言った。
「『カサブランカ』がヒットしたのは、まさにその多くの脚本家たちが関わったからよ。リメイク禁止にした理由もそこにある。あの映画は、いくつもの視点とアイデアが交じり合って生まれたからこそ、今でもハリウッド映画の遺産として語り継がれているの」
ケイコが興味深く尋ねる。
「何人くらい関わったんですか?」
サキは思わず肩をすくめてから答えた。
「正式には三人。でも裏では、何人も関わってたわよ。脚本家だけでなく、監督や俳優たちもね」
ケイコは少し考えてから、目を輝かせて言った。
「『カサブランカの朝食』に書かれていましたよね。エンディングも何パターンか撮って、みんなで一番いいのを選んだって。まさに理想的な形ですね。三人寄れば文殊の知恵って言いますけど」
サキはうなずきながら、続けた。
「その通り。一人だけの力じゃ、とてもあの作品は生まれなかったわ」