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オードリー・ヘプバーン「ハリウッド・マジックなの」



「ハリウッドマジックね」


「ティファニーで朝食よ」

なぜ私が起用されたのか、わからないの。

主人公は娼婦なのよ。最初のオファーはマリリン・モンローだったけど。彼女は断ったのよ。

なぜ? この役を私に?


撮影初日、ティファニーの前に立ったとき、私は完全に場違いだった。

真珠のネックレスも黒いドレスも、あんなに似合っているふりをして、心の中では震えていた。

あの役には、もっと……もっと「火」が必要だった。

マリリンならきっと、その火を持っていた。私は違う。私は……煙のような女優。


「あなたのホリーは現実から少しだけ浮いている。それがいい」と監督が言った。

褒め言葉に聞こえなかった。

誰にも触れられず、誰にも届かない。そんな役、演じたくなかった。

けれど、演じてしまった。演じるしかなかった。


夜、ホテルに戻ると鏡の前で練習した。

「ねえ、見て。私は自由よ。私は誰のものでもないの」

笑いながら言うセリフ。けれど、その瞳の奥に、寂しさを仕込む。

そういう女を、私は演じていた。いや、演じるふりをして、自分を重ねていたのかもしれない。


あの映画がヒットして、人々は言ったの。

「あなたのホリーは夢だった」

違うわ。

私のホリーは、現実だったのよ。

それを見抜いた人は、少なかったけれど。


マリリンが演じていたら、きっと別の映画になっていた。

けれど、私が演じたからこそ、あの曖昧な終わり方が似合った。

本当の意味での「ハリウッドマジック」って、たぶん——

選ばれることじゃないの。

「選ばれてしまう」ことなのよ。



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