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サンズリバーサイド外伝 ジプシーローズの妹
サキは大牟田に帰郷し、ジプシー・ローズについて調査を始めた。
昭和三十年代、一世を風靡したストリッパーがいた。
彼女の名前は――ジプシー・ローズ。
昭和六年十二月、大牟田市に生まれる。
本名は志水トシ子。
四歳から日本舞踊を、そして小学校五年生の頃からはバレエを習い始めた。
トシ子が十四歳のある日、
彼女は偶然、家族と知人が交わす会話を耳にした。
「そろそろトシ子と妹を、芸者にでも売ってしまおうか」
――そんな軽い冗談だった。
けれど、トシ子はその言葉を本気に受け取ってしまった。
その日のうちに、六歳の妹の手を取り、
彼女は黙って家を出た。
行くあてもなく、しばらく二人で歩き続けた末、
小桜舞踊団の前に辿り着いた。
舞踊団の座長は、その幼い姉妹を匿った。
ほどなくしてトシ子は上京するが、
妹のエイ子は中学を卒業するまで、小桜舞踊団の座長のもとで暮らすこととなった。




