表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェイドアウト断章  作者: 石藏拓(いしくらひらき)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

374/524

サリンジャーと恩師

サリンジャーと恩師


ホールデンが最後に頼ったのは、恩師のバーネット教授だった。

私がこの場面を読むと、どうしても胸がざわつく。

教授は、彼を見捨てずに耳を傾けようとする数少ない大人だ。

けれど、その言葉は「大人の常識」に縛られている。


ホールデンは助けを求めるように、しかし不器用に語りかける。

「どうしても、生きていく気になれないんです」

教授は落ち着いた声で答える。

「君は才能がある。だが浪費している。しっかり未来を考えるんだ」


私はそのやりとりに、深い断絶を感じる。

ホールデンの心は「生きるための理屈」では癒せない。

彼が欲しているのは、説得や忠告ではなく、寄り添う温もりなのだ。


バーネット教授の助言は正論だ。

だが、正論は往々にして孤独を深める。

ホールデンが部屋を飛び出してしまうのも無理はない。


私にとって、この場面は大人と若者の永遠のすれ違いを象徴している。

教授は救いの手を差し伸べたつもりだった。

しかしホールデンには、また一つ「理解されなかった」という痛みが刻まれた。


こうして彼は、ますます自分の殻に閉じこもっていく。

その寂しさが、物語の余韻を決定的にしているのだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ