SAKIBLANCA その1
撮影現場にて
私は撮影に立ち会っていた。スタジオの照明が彼女を照らし出すと、長身のアマミが話し出した。
「メンテナンスのいらないのが、本当の友人という人もいる。どんなに久しぶりに会っても、まるで昨日別れたばかりのように、ただちに旧交を温めることができる。それが真の友だと。でもね、何年も会わずにすむような関係を、わざわざ友人と呼ばない。必要な時に駆けつけてくれ、自分を支えてくれ、慰めてくれ、経験を分かちあってくれるからこそ、友なのよ。だから、友人をつくるには努力もいるし、メンテナンスもいる。ついでに言っておくとね。メンテナンスのいらないのが家族、と思っている人!! 完全な大きなカン違いよ。家族のメンテナンスを怠ってきたからこそ、男は家庭に居場所を失ったの。ほうっておいても保つような関係は、関係とはいわない。無関係と、いうのよ」
彼女の声がスタジオに響き渡り、私はその演技に圧倒された。さすが人気女優だ。台詞の長さにも関わらず、彼女は一言一句逃さず完璧にこなしていた。しかし、セリフが長いと思った私は、彼女からのダメ出しがあるかもしれないと待っていたが、それはなかった。
他のシーンも順調に進み、撮影は順調だった。私はそのまま帰宅し、今日の撮影を振り返りながら、アマミの言葉の重みを感じていた。彼女の言葉が、まるで私自身に問いかけているかのように響いていた。