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Dolls(1)思いが太陽より熱くなると 北野武は恋愛ものの天才
北野武は恋愛ものの天才
映画『Dolls』(1)
思いが太陽より熱くなるとき
北野武監督の映画『Dolls』。
「Dolls」——人形。
恋をして、相手への思いが太陽より熱くなることがある。
異常と思えるほど相手を愛しすぎて、
思いが太陽のように燃え上がってしまう。
そうなると、相手は近づくだけで焦げてしまい、
やがて身を滅ぼしてしまう。
『Dolls』では、三組の男女の恋愛が描かれている。
本作の日本での評価は、すこぶる低い。
けれど僕にとっては、北野作品のなかでナンバーワンだ。
涙があふれてくる邦画なのに、
どこか邦画らしくない。
むしろフランス映画かもしれない——
あえて言うなら『ベティ・ブルー』のような。
ダマスカス映画祭ではグランプリを受賞し、
ロンドンやフランスではロングラン上映。
モスクワでは、二年にわたって公開されたという。
物語は、人形浄瑠璃から始まる。
演じられているのは、近松門左衛門の『冥途の飛脚』。
「生きられるだけ、この世で添おう」——
そんな刹那主義的な逃避行が、静かに、しかし強く、幕を開ける。