9 村上春樹さん 「文にリズムをつける」
「もしその文章にリズムがあれば、人はそれを読み続けるでしょう。
でももしリズムがなければ、そうはいかないでしょう。
二、三ページ読んだところで飽きてしまいますよ。
リズムというのはすごく大切なのです」
(村上春樹『夢を見るために毎朝僕は目覚めるのです』)
村上春樹様の文
「おいらの言っていることはわかるかい? 踊るんだ。
踊り続けるんだ。何故踊るかなんて考えちゃいけない」
一文が短く、リズミカル。
なぜリズミカルに感じるかというと、文章の切れ目を数えてみれば、
後半がだいたい「5音」「9音」でそろえている。
「おいらの(4音)言って(3音)いることは(5音)わかるかい?(5音)
踊るんだ。(5音)踊り続けるんだ。
(9音)何故踊るかなんて(9音)考えちゃいけない。(9音+ゃ)」
一定のパターンがくり返し現われ、個々のパターンに要する時間が
等しいとき、そこにはリズムがみられる。
言葉のリズムとは、「一定のパターンのくり返し」。
村上春樹さんの文章は、言葉の切れ目ごとの音節の数が、
ずっと一定。
リズム感のない文しか作れない人は、まず一文を短くする。
「平家物語」の文のリズム
祇園精舍の鐘の声、諸行無常の響きあり。
娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。
おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。
猛き者もつひには滅びぬ、ひとえに風の前の塵と同じ。