4 三人称一視点で
柏田先生は言う。
小説を書くときは三人称一視点を勧めます。
特にエンターテイメント系の小説の場合は、
三人称で書かれることが多い。
私小説などを含む純文学系は、短編で書かれる。
「僕は・・」の出だしで書くとなぜかよく書ける気分がする、
一人称が使われる割合が増えているそうです。
一人称は“私”といった主人公の視点なり思考が動かせません。
私の行動だけで物語を展開するしかない。短編に向いています。
一人称でも、章を変えるタイミングとかで、
人称であったり語り手を変えるという手法を使う場合もあります。
三人称は登場人物の名前で物語を展開させていく。
シナリオ手法的な「三人称多視点」で書く場合と、
一人称手法に近い「三人称一視点」に大別できます。
近年の小説コンクール(特にエンタメ系の)などでは
「三人称多視点」だとマイナス点がつけられるようになっています。
マリアはスカウトマンの加山に、渋谷の雑居ビルに連れて行かれた。
ドアに「渋谷芸能社」と看板があって、
壁には女性モデルのポスターが貼られている。
———あれ、この子ギャル雑誌に出てた?
じっと眺めていると、
「知ってる? しらとりれいこちゃん。うちの看板モデル」
マリアの驚きの表情をみて、加山は決まり切ったトークを始めた。
———この子はチョロそうだ。三日で落とせる。
加山は独り言を言ってほくそ笑んだ。
上記は三人称多視点での書き方で、
マリアと加山の視点が混在しています。
間違いではないし、三人称多視点で書かれたプロの作品もあります。
「三人称一視点」と作者が決めた場合は、
視点を混在させずに書かなくてはいけなくなります。
マリアを視点者としたなら、
「知ってる? しらとれいこちゃん。うちの看板モデル」
という加山のセリフ以後を例えば、
後ろから加山が得意そうに言う。
マリアの驚きをみてとる、スカウトマンの余裕なのか……
———この子はチョロそうだ。三日で落とせる。
なんて思っているに違いない。
というような書き方になります。
「ここから人物視点が変わった」と分かるように書く。