(23)米国男優一位
(23)米国男優一位
「ボギーって、なぜ人気で、アメリカ人が選ぶナンバーワン男優なんでしょう?」
「ボギーがなぜ米国男優一位なのか。
理由は私なりにわかったような気がする。
持論だけど。
決して二枚目じゃない。
悪役専門だったボギーが戦争プロパガンダ映画の主演が決まった。
脚本もできていない。やっつけの映画に。
連合軍がカサブランカ侵攻する一九四二年十一月二十六日に上映すると決まっていて、
映画は九か月足らずで仕上げないといけない。
主演男優など、選べない。
映画の神様はボギーをスターにしてしまう。
強運ね。ボギーって高倉健に似ているのよ。
女性の母性本能をくすぐらせる不器用で、
ガラスのハートを持つ男よ。
幸福の黄色いハンカチって映画で・・・」
「高倉健のヒット作ですね」
「こわもてスターが、弱い面を見せると人気がでる。
刑務所に入って、妻にはもう離縁だと言って、面会を拒否した。
『俺が出所して、まだ俺を愛しているなら、家の外に黄色いハンカチを掲げていてくれ!』
と健さんは言う。
でも!健さんは、出所するが、元妻の家に行けないの。ボギーと同じ」
「なるほどですね。ボギーは健さんですか」
「でもね。健さんと違ってボギーは泣き虫。
ボギーは女性の頬を叩かない。
ウッディアレンの作品では、女性に強気な男としてボギーは描かれているけど。
映画『カサブランカ』を観ればわかるわ。
ボギーは、めそめそ泣き虫男なの。
沢田研二が歌うカサブランカ・ダンディで、
ボギーは『しゃべり過ぎる女の口をさめたキスで ふさぎながら』と歌われているけど。
違う。
しゃべり過ぎたのはボギーの方なの。
ボギーがバーグマンに、いろいろ聞くので
『質問を全部終わらせる答えは一つね』と言って、
バーグマンがいきなりキスをする。
カサブランカ・ダンディで、
ボギーは『男のやせ我慢が粋にみえたよ』と歌われているが。
ちょっと違う。
わたしはやせ我慢だと思わない。
ボギーは今度女性に裏切られると死んでしまいそう。
バーグマンを突き放す。
『僕には君とのパリの思い出がある』
と言ってね。
思い出の方が現在の恋より大切なのね」