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カサブランカで朝食を(9)ゲラン・ミツコ

栄次郎は東京生まれです。

栄次郎の母は青山光子と言います。

明治25年に東京牛込で父が経営する骨董商の店先で、

駐日オーストリア代理公使・ハインリッヒ・クーデンホーフ・

カレルギー伯爵が馬で通りかかった。

店の前の打ち水で凍ったところがあって、伯爵の馬がすべって転んだ。

カレルギー伯を介抱したのが、骨董商の娘、青山光子だった。

知り合った二人は、二週間もすると、領事館で同棲を始める。

光子はカレルギー伯と18歳で結婚する。

親には勘当されてしまう。

長男・ハンス光太郎、次男・リヒャルト栄次郎が東京で生まれました。

一八九六年に光子は、夫の祖国オーストリアへ渡る。

青山光子はゲラン社の香水ミツコのモデルだという説があります。

1919年、ヨーロッパが日本ブームの真っ只中にあり、

極東の文化が人々を魅了していた時代です。

ジャック・ゲランは新しく創作した香りを〈ミツコ〉と名付けました。

香水 ミツコという名前は、

フランス人作家クロード・ファーレルの小説『ラ・バタイユ』の

ヒロインだそうです。

小説は日露戦争で戦死した日本の海軍総督の妻ミツコが

見せた情熱的な生き方を描いたものです。

ジャック・ゲランと小説家ファーレルは親交があり、

小説に登場する日本人女性の名前を香水につけたそうです。

現実のミツコではなく小説のなかの架空の登場人物がモデルだ、

というのですね。

ゲラン社の広報担当重役の一人が、

実在の人物がモデルだと思われてもいいのではないか、

曖昧にしておいたほうが得策だと主張しました。

日本でのミツコの売れ行きにプラスになると考えてか、

クーデンホーフ光子と香水の命名をむしろ関連づけるように

方針を変えたようです。


光子は実在の人物で当時のウィーンやパリの社交界で花形的存在でした。

当時のオーストリア・ハンガリーを代表する

貴族ハインリッヒ・クーデンホーフに嫁いだ日本人女性ミツコさんは伯爵夫人として、

母として、生涯をヨーロッパで送りました。

控えめながらも情熱的な美しさで、

ミツコがいた頃、ジャック・ゲランもパリやウィーンの社交界には

出入りしていたようですので、

二人が面識があったということも考えられますし、

直接面識がなかったにしろ、美しく気高い日本人女性の評判は

ジャックの耳にも入っていたでしょう。


ケイコ「光子は、ほれっぽい情熱的な女性なんですね」

「はーい。ケイコさん。栄次郎もそうよ。

15歳年上の女優と結婚している。

光子は結婚に反対して栄次郎を勘当している」

「カサブランカって、どんな意味なんですか?」

「北アフリカにあるモロッコの都市で。

スペイン語で『白い家』という意味よ。モロッコはフランス領だった」


「地図で見るとスペインの南で、国境も近い。

下手したら泳いでゆけますね」

「両国はお互いに目と鼻の先で。

スペインとモロッコは兄妹みたいな国かもね」


さあ、今日はここまで。

みなさん!ごきげんよう!」



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