SAKIMORI 終章2 守一御殿
帰国して数日が経っていた。
守一の主演男優賞が決まった。
ホテルでの受賞式で、主演男優賞を受賞して壇上でスピーチしている守一の姿があった。
あの殺人者に大勢の人が拍手喝采をしている。
私にはとても奇妙に思えた。
そして守一御殿と呼ばれる邸宅の完成披露もかねてパーティーが盛大に開かれた。
出席した私に、社長が守一の衣装部屋を案内して言った。
「サーキー! どうだ! すごいだろう」
黙ってついてきた守一に言った。
「うわー、すごい。もう大役者ね。受賞スピーチも堂々としていたわ」
「あれはマネージャーの用意したものを暗記しただけです」
「さすが! 役者ね」
後ろからブツブツ言いながら、ついてくる守一。
私はうしろをふりかえって、
「ねえ! しゅうちゃん! あのお気に入りのジーンズは持ってきたの?」
守一はとんでもないという顔をして首をふった。
私は守一に「みなさんに、あいさつして回りなさいよ、
しゅうちゃん! あなたはホストなのよ」
守一は私のうしろを金魚のフンのようについてまわるだけだった。
私は守一の行動に他の客の視線を感じて、これは良くないと思った。
守一が他の客に話しかけられた時に、すばやく英次をつかまえた。
「疲れたわ、帰りましょう」
「OK!」
英次は即座に私の手をとって退出した。
英次はポルシェに私を乗せると、静かにスタートした。
すると、車の前にマネキンのようなものが飛び込んできた。
私は悲鳴をあげた。
車にしがみついてきたのは守一だった。
「僕もつれていってください」
私は返事をしないでいた。
守一は車のドアを開けて訴えた。
「お願いです。僕はここに、いたくないんです」
「でも、しゅうちゃん、あなたの家はここなのよ。
それに多くの人があなたを待っているのよ」
「僕はウチに帰りたいんだ」
私は英次の顔を見た。英次は笑っていた。
「社長の身にもなってよ。
あなたのためにこんな豪邸を作って」
「あんなヤツ、殺してやる」