SAKIMORI ナッシングダークネスその1
主人公は、死期が近づいた老婦人で、死神が見えた。
お迎えまたは死神。
老婦人は死神に触られると死んでいく人々を何度も目撃する。
死神は普通の人間なのだが、老婦人にしか見えない。
とうとう死神に会わないために自宅に鍵をかけて閉じこもってしまった。
老婦人は新地町アパートに住んでいた。
身寄りもなく、死を恐れるあまりにドアに鍵をかけて、
閉じこもりの生活をしていた。
有明海から海風が強く吹く寒い日だった。
老婦人はベッドにいたが、ドアを叩く音がした。
ドアを叩く音。
「僕だよ」
老婦人「僕って、誰よ?」
「息子のケンジだよ」
「やめて。息子は中東でゲリラに処刑されたんだから」
「僕だよ」
「嘘でしょ。息子なんて。わかっているの。だまされないわ」
「母さん! 僕だよ!」
「うそよ、息子なんて。私をほっておいて。わかってるのよ。
あなたが何者かわかるの、私には」
チェーン越しにドアをちょっとあけて外をのぞく。
「ケンジなのね。生きていたの?」
ドアチェーンをはずしてドアをあける。
「僕だよ」
「本当にそうなの?」
「どうして入れてくれなかったの?」
「死神よ。ねらっているの、中に入ろうと。
ドアをたたいて、入れてくれというの。
あけずにいたら、去っていった」