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SAKIMORI あの渚にて
出版元幻冬舎「SAKIMORI」は、絶版しました。
印税収入は少なく、絵本館他に印税は寄付しました。
今後、億単位の印税の見込みもないので再販はありえません。
そこでここに断片を公開します。
YOUTUBE朗読 https://www.youtube.com/watch?v=3EqnT99M-CA&t=5s
北からの核攻撃により、
人類は今日、放射能の中で滅びる。
全滅の日、明子の恋もまた、静かに幕を下ろそうとしていた。
明子は車を走らせ、港へと急いだ。
出航を目前に控えた潜水艦が、波間に静かに停泊していた。
艦長は明子の姿を見つけると、デッキを降りてきた。
「ねえ、ここにいて。……それでも、行くの?」
「……ああ。ずっと悩んだけど、
最後の瞬間は妻と子供と一緒に迎えたいんだ」
「でも、会える可能性なんて、もう……ほとんどないじゃない」
「そうだな。けれど——
もし君ともっと早く出会っていたなら、
僕はきっと、君と終わりを迎えたかった。
あの渚で過ごした日々を胸に、僕は行くよ。
……僕の気持ち、わかってくれるだろう?
愛している」
「SAKIMORI」幻冬舎から