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その41 なんとんつくれん物語終章

治療の方法がない。

久留米市の病院だったらどうだったのだろう?

継父の時も同じ問題で悩んだ。

大牟田の病院でいいと言った。

大牟田はガン治療にいい噂がない。

ホスピス入院となり、元看護婦の親戚に聞いたが、

ホスピスに異論はなかった。

市民病院から末吉町の今野病院に移る。

母はわかっていたと思う。

継父をなくし、80歳をこえて独居老人の身になって、

病院に行かずに自然死を望んだのだ。

今野病院に移って二ヶ月目だった。

二月二十日午前零時に突然血圧が下がり、

一時間ももたずに、午前一時、八十一歳で旅立つ。

葬儀は磯浜で行なった。

納骨を済ませて母の家に戻る。

お隣の犬は知っている。

ぼくが家に入っても隣の犬は吠えないのだ。

母の霊が僕についてきていると僕は思った。

機関銃のように話す母が、脳梗塞で、何も話せないで、

病院では僕を見つめていただけだった。

遺品整理していると、背後に何かを感じる。

母が案内したがっているように思えた。

刑事のように金品を探した。

巾着袋や封筒やミニバックから、

千円札や五百円硬貨がでてくる、でてくる。

合計で三万円以上になった。

母が申し訳ないような顔をしている気配を感じた。

予想していたが、死後一週間過ぎると、

僕が家から出ると隣の犬が吠えだして止まらない。


母は、初めて食べた感想に、「なんとんつくれん」。

初めて会った人の印象も、なんとんつくれん。

映画を観ても、なんとんつくれん。

意味は、良いでもなく、悪い意味でもない。

何とも言えない。

「なんとんつくれん」は母の口癖だった。


「いかように形容していいか分からない」

「どうしていいのか手がかりの無い」

「得体の知れない」「訳の分からない」の意味。

亡き母に、このエッセイを読ませたら、

開口一番に、言うだろう。

「なんとんつくれんね!」


なんとんつくれん物語 終わり


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