その10 遺産相続の行方
「若い方から死んでいく」と、母は言った。
克基の子供らだ。
子供はA夫、B子、C子、D子、E夫と生まれた。
最初にC子が10代で、D子がガンで20代で、E夫が30代で死んだ。
信夫はE夫の死後の立会で中国地方に行った。
山中で車中睡眠したE夫は練炭で暖をとり、
一酸化炭素による中毒死で、車の座席で死んでいた。
顔は真っ黒になっていたと信夫は言った。
タキは我が子・信夫が不憫で平成になって克基に
信夫を養子として認知させた。
石藏家の遺産相続の権利を信夫に与えたのだ。
母は家族は呪われていると言った。
原因は母から聞いていたが、問題があるので封印する。
克基が海で溺死した。
老人になり、徘徊が多かったらしい。
離婚したB子が実家に戻り、タキと暮らした。
克基が遺言書を書いていた。
タキが死に、信夫に遺産相続されるのを疎ましく思うB子が動いた。
済生会病院に入院中の信夫に見舞いに行き、
信夫が保管していた克基の遺言書を見せてほしいと言った。
B子は遺言書を手に取ると、無断で持って帰ってしまった。
B子からすれば克基もタキも自分がめんどうを見ていたので、
全財産を相続するのが当然だと思っていた。
母は言う。
「よかろう? もうあん人たちとはつきあわんで」